走りながらギャラガは拳銃をホルダーから抜いた。安全装置を外した。デネロスを見ると彼女はアサルトライフルを水平に構えて走っていた。遺跡を走り抜け、坂を少し上り、初めて見る大きな岩の手前で、地面に落ちている物を見つけ、彼は急停止した。思わずデネロスに怒鳴った。
「止まれ! 踏むな!」
デネロスも何か見えていたのだろう、ピタリと足を止めた。
砂の上に自然に落ちている筈のない物が散らばっていた。ギャラガは最寄りの物を拾い上げた。黒い革財布だ。中に入っていた紙幣がはみ出していたので、押し込めて、中身を検めた。名前が書かれた物はなかったが、見覚えがあった。
デネロスも別の物を拾い上げた。こちらは誰の持ち物か明白だった。身分証が入ったカードケースだ。緑色の鳥の徽章も入っていた。彼女がギャラガに囁く様な低い声で言った。
「カルロの身分証よ。」
「こっちは財布だ。」
地面を見ると何か引きずった様な跡が砂の上にあった。それは長くはなく、すぐに激しく乱れて砂を蹴散らした感じで、そして忽然と岩の前で消えていた。いきなり引っ張られて、抵抗して・・・それからどうなった?
ギャラガは周囲を見回した。岩が点在しているが、概ね平坦な地面が少し低い位置に広がっていた。昔沼があった場所だ。
デネロスが足跡を迂回して大岩に近づいた。彼女の目が金色に輝くのが見えた。
「ここに、”入り口”があるわ。」
ギャラガがそこに近づいた時、遺跡の方からテオの声が聞こえた。
「おーい、何かあったのか?」
振り返ると携行ライトの光が遺跡の中を動いていた。デネロスが自分のライトを点灯させた。
「ここです! テオ、足元に気をつけて!」
テオが彼女のライトを発見してやって来るのがわかった。ギャラガは不思議に思えた。
「彼は”ティエラ”だろ? どうして何かが起きたってわかったんだ?」
「彼はわかるのよ。」
とデネロスが答えた。
「さっき私達が感じたカルロの気を、彼も感じたの。よくわかんないけど、彼は少佐とカルロが危険を察知したりする時に発する気の動きを感じ取るのよ。きっとグラダ族の気が凄く強いか、独特の波長をしているのだと思うわ。」
「それでも普通の”ティエラ”は感じる筈がないと思うが・・・」
デネロスはテオが特殊な生まれの人間であることをギャラガに教えるつもりはなかった。ここで話す場合ではないと心得ていた。彼女はこれだけ言った。
「テオは文化保護担当部のお守りみたいな人なの。だから少佐はこの任務に彼を加えたのよ。」
1 件のコメント:
原作では、カルロが姿を消す時、デネロスとギャラガはキャンプで二等兵の1人と休憩していた。
テオはもう1人とサン・ホアン村で食料を購入していた。
彼が戻るとカルロの行方不明事件が起きた後だったので、彼は2人の少尉に案内させてカルロの足跡があった場所へ行く。
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