ジャズコンサートの夜の部は盛況だった。昼の部よりも客数が多く、VI P席にはイグレシアス建設大臣を始めとするセレブが座った。
ケツァル少佐はアンドレ・ギャラガ少尉を官舎へ帰した。月曜日は普段通り勤務がある。少佐がシティ・ホール周辺に結界を張ったので、テオは夕食を買いに徒歩で出かけた。用心棒にデルガド少尉が同行した。
「あの大きなドーム全体を結界で守るなんて、少佐は凄いですね。」
と歩きながらデルガドが感心して言った。
「グラダ族だからね。」
「ステファン大尉もいつかあんな力を持てるんでしょうね。」
どんなに修行しても力の大きさに限界があるグワマナ族のデルガドはちょっぴり羨望を声に滲ませた。テオは励ましの意味を含めて言った。
「力が大きいからと言って、それが将来の栄光や幸福に繋がるとは限らないさ。グラダ族は結局力が大き過ぎて部族として滅んでしまったのだから。グワマナ族は力が大きくない分、世間に馴染んで穏やかに暮らしてこられたんだって、ずっと以前別の事件で君の部族に関わった時に少佐が言っていた。ステファンは持っている力が大き過ぎて子供時代から制御に苦労してきた。彼は力を持とうとしているんじゃなくて、力をどう使うべきかを修行しているんだよ。メスティーソだから、純血種の君達みたいに生まれつき使い方が身についている訳じゃない。学ばないといけないんだ。それは、アンドレ・ギャラガもロレンシオ・サイスも同じなんだ。彼等は君みたいに、いつか自然に力を使いこなしたいと思っている。」
デルガドが微笑した。
「貴方は白人なのに、我々以上に我々を理解されているんですね。」
「しているんじゃなくて、日々理解しようと努力しているのさ。君達の修行と一緒さ。君達とずっと友達でいたいからね。」
「大尉が言った通りの人ですね。」
テオはデルガドを見た。
「カルロが俺のことをなんて言ったんだ?」
デルガドがクスッと笑った。
「隣で安心して昼寝出来る人だって・・・」
「なんだよ、それ・・・」
テオも笑った。
「俺だってカルロのそばなら昼寝出来るぞ。あいつは最強の虫除け男だから。」
これはデルガドに大受けした。
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