2022/01/24

第5部 西の海     23

  ステファン大尉とフレータ少尉が太平洋警備室に戻ってから1時間後に大尉からテオの携帯にメールが入った。

ーー今夜2030にこちらのオフィスに来ていただけますか?

 テオは即答した。

ーーO K

 部外者で白人のテオに太平洋警備室が抱えている問題を打ち明けてくれると言うのだろうか。
 午後の検体採取はセンディーノ医師が親しくしているアカチャ族の家族から始めた。純血種とメスティーソの夫婦だった。両方の細胞をもらった。子供達は学校から帰るのを待って、採取した。それから5軒回った。金曜日迄に全部の家を回れそうだとカタラーニが機嫌良さそうに言った。
 夕方、早めに作業を切り上げたガルドスが、診療所で清めの儀式の練習をすると、看護師が驚いて眺めていた。村の外から来る人間が何故それを知っているのか、と言う顔だった。ガルドスは医師にも教えるのだと彼女達に言った。すると彼女と仲良くなった方の看護師が、ガルドスの発音の修正を指導してくれた。
 その日の夕食はセンディーノ医師の自宅キッチンで料理された。センディーノはガルドスとカタラーニが教わった通りの簡略化された清めの儀式を見て、それからカタラーニの動画を自分の携帯に送ってもらった。

「これで私が作る食事を村の人が食べてくれたら、患者に療養食を出してみます。」

と彼女は新しい挑戦の考えを告げた。テオは検体採取の手伝いをしてもらっているお返しですと言った。
 夕食が賑やかなものになったので、危うく大統領警護隊の面会要請に遅れるところだった。テオは院生達に、ステファン大尉と会ってくる、と言って宿舎の鍵をカタラーニに預けた。

「俺が親しくしている文化保護担当部の活動を知りたいらしいよ。」

と誤魔化した。そしてカタラーニには、ガルドスに悪さをするなよ、と注意を与えた。カタラーニは笑って、「そんな恐ろしいことはしません」と言った。

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