「何故ケサダ教授がグラダ族だと思うんだ?」
と車に乗り込んですぐにロホが後部席のギャラガに尋ねた。ギャラガ少尉は肩をすくめた。
「スクーリングで数回お会いしただけですが、教授は時々私に”心話”で力の使い方を教えて下さいました。私が他の学生の行為や発言でちょっと動揺したりした時です。私のほんの少しの心の乱れを察知されたのです。官舎で多くの先輩達に助言を頂いたりしますが、教授が指摘された様な細やかな点まで触れられたことはありませんでした。何と言うか、教授は・・・」
テオがカーブでハンドルを切りながらギャラガの言葉を継いだ。
「ケツァル少佐みたいだ、と言いたいのかい?」
「スィ!」
ギャラガが嬉しそうに肯定した。
「ステファン大尉は、戦いの時の力の使い方を上手に教えて下さいますが、抑制方法は苦手のようで・・・」
「あいつ自身が学んでいる最中だから、仕方がないさ。」
ロホが苦笑した。
「教授はひたすら抑制することを学んで来られた方だから、そちら方面がお上手なのだろう。これからお嬢さん方も教育していかなければいけないしな。」
「でも、何故グラダだと公表なさらないのです?」
「大人の事情だよ、アンドレ。」
テオはグラダ族仲間を見つけて喜んでいる若者にそっと釘を刺した。
「彼には彼の家族の事情があるんだ。それに教授はマスケゴ族として生きたいと希望されている。お子さん達がどう思うかは、お子さん達の問題で、俺たちがとやかく言うことじゃない。」
ギャラガは黙って外の風景を眺めていたが、やがて頷いた。
「わかりました。私はこれからも教授のアドバイスを素直に受け容れる、それで良いですね。私も母親が言ったブーカや、もしかしたらカイナ族かも知れませんが、皆さんが私はグラダで、グラダとして生きろと仰る。だからその通りに生きようと思っています。グラダ族として学ぶ方が私の気持ち的にも楽なので。」
何だかわかった様なわからない様な意見だったが、テオとロホは微笑して頷いた。そして2人とも思った。 ケサダ教授と家族の血統は実に明確だ。しかし、このアンドレ・ギャラガは本当に何者なのだ?
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