「まず、会議の前にモンタルボ教授を訪ねて来た男性は、水中活動での機材を提供すると言ったのですね?」
「スィ。お金の具体的な話を向こうが始める前に私が断ってしまったので、彼から聞いたのは装備品やダイバーの調達と言った人材やハードウェアの話だけです。」
「会議の後でかかってきた電話の主は、クエバ・ネグラ沖に黄金を積んだ沈没船の言い伝えはないか、と訊きました。」
ケツァル少佐がテオ、ロホ、ギャラガを見た。テオが言った。
「同じ人物ではなさそうだが、恐らくチャールズ・アンダーソンとか言う男も沈没船を探しているんじゃないか?」
「しかし、何故私なんです?」
とモンタルボ教授が不安そうに呟いた。
「私達が発掘許可を得たとしましょう。そこへやって来て、手を貸すと申し出て来るのであれば、筋が通りそうです。でも私はただの考古学者で、ほんの数ヶ月前にあの海に潜って岩棚を見つけたんです。新聞記事にならなかったし、町の噂にもなっていない発見を、どこで聞きつけたんです? 私があの海に関心を持っていることすら、知っている人間はいないでしょうに。」
「貴方があの海に関心を持っていると知った人間がいたのでしょう。」
とロホが言った。
「アンダーソンとか言う人物は資金を持っている。だが目立ちたくない。彼自身が関心を寄せた海域に偶然考古学者が潜って何かを見つけた。だから彼は貴方の発掘隊を隠れ蓑に別の何かを探したいのでは?」
「すると電話の主は別のトレジャーハンターで、ライバルのアンダーソンが潜りそうな海を探って先手を打とうとしている?」
とギャラガが推測を述べた。彼はちょっと面白がっている雰囲気だ。
「すると、海岸に放置されていた車だが・・・」
テオが言うと、彼は早速店へ来る途中の車内で検索したものを再び出してきた。
「車に乗ってきた人間が海に潜っていたら、サメが来て食っちまったんですね。」
え? とモンタルボ教授が怪訝な表情になった。彼の前に、ギャラガが遠慮なく無惨な遺骸の画像を突き出した。野次馬が撮影したものを早速S N Sにアップしたのだ。
ウグッと声をたて、モンタルボ教授が後ろを向いた。慌てて紙ナプキンで口元を抑えた。テオは画像を見なかったが、少佐とロホは平然としていた。マナーだなんだと言う割にヴェルデ・シエロはこう言うところに鈍感だ。
「放置自動車の主、と言うか、盗難車だったらしいから、車泥棒なんだろうけど、そいつがサメに食われたのかどうか、調べなきゃな。」
すると、少佐が嫌なことを言った。
「車内に残された泥棒のD N Aと、サメから出た死体のD N Aを比較すれば、判明出来るでしょう。」
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