呼び出されたのは昨夜逃げて来た”出口”があった体育館だった。そこでテオとギャラガは遊撃班のセプルベダ少佐と会い、アーロン・カタラーニが担架に乗せられて運ばれて来た。
「意識がない人間を伴って”跳ぶ”のは難しいが、昨夜君はやってのけた。」
とセプルベダ少佐に言われ、ギャラガは赤面した。
「無我夢中で”跳んだ”のです。吹き矢とライフルで狙われていましたから、自身とドクトルを守る為に、考える余裕なく目に入った”入り口”に跳び込んだだけです。」
フンっとセプルベダ少佐が鼻先で笑った。
「余裕があれば跳ばずに吹き矢と弾丸を爆裂波で破壊出来ただろうな。」
そう言われればそうだ、とテオは今更ながら気がついた。毎週土曜日にケツァル少佐が部下達にさせている軍事訓練は、飛来する弾丸の破壊がメインなのだ。
ギャラガが萎縮した。
「私は未熟です。」
「卑下するな。」
とセプルベダ少佐が言った。
「こちらの手の内を敵に披露してやる必要はない。寧ろ目の前で4人の人間が一瞬で消えたのだ、敵は腰を抜かしただろうよ。」
ずんぐりした純血種の少佐がカラカラと笑った。
「意識がない男と”操心”で意思を失っている男を伴って跳んだのだ。誰にでも出来ることではないぞ。」
そう言えば、以前意識がない人間を伴って”跳んだ”経験がない若い隊員が、ケツァル少佐に呆れられていたな、とテオは思い出した。思考しない物体を運ぶのと違って人間を運ぶのは難しいのだろう。
少佐は体育館の中を見回した。”出口”があったのだから、”入り口”も近くに生じている可能性があった。
「ミーヤ迄その学生を背負うのはどちらかな?」
訊かれてテオが手を挙げた。
「俺が運びます。先導者に負担をかけたくありませんから。」
セプルベダ少佐が微笑んだ。
「貴方は本当に我々のことをよく理解しておられる。」
「グラシャス。ところで、アランバルリの尋問は誰方がされるのですか?」
「あの男の能力の強さが不明なので佐官級の者が行います。」
「彼のDNAも調べたいので、頬の内側の細胞を採取しておいて欲しいのですが・・・」
テオの要求に少佐が笑って頷いた。
「担当者に言っておきましょう。貴方もとことん科学者ですな。」
その時、ギャラガが部屋の南側を指差した。
「少佐、あそこに”入り口”があります!」
「うむ。ミーヤの国境検問所を目的地に”跳べ”。」
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