テオが”ヴェルデ・シエロ”と自分達”ティエラ”、即ち普通の人間の違いを感じるのは、こんな場合だ。
「死体を探す」と聞いて、彼とテーブルを同じくする友人達が目を輝かせた。女性のデネロスもその一人で、期待を込めた目でケツァル少佐を見た。テオは彼女の交際相手のキロス中尉をそっと覗いてみた。客人の中尉は退くかと思ったが、やはり彼も”ヴェルデ・シエロ”だった。興味津々と言った顔で部署違いの上官を見たのだ。
「死体を捜索するのですか?」
少佐がキロス中尉の目を見た。”心話”だ。一瞬にして情報伝達が行われる、”ヴェルデ・シエロ”が”ヴェルデ・シエロ”である最低必要条件だ。「おう・・・」とキロスが呟いた。
「それは確かに犯罪の匂いがしますね。」
「犯罪捜査は遊撃班の十八番だな。」
とアスル。誘うのかと思いきや、
「だが、セプルベダ少佐から指示がなければ君は動けまい。」
「休暇中です。」
とデネロスが言った。
「働く必要はないわ。」
「しかし・・・」
キロス中尉はジャングルへ行きたいのだ。ジャガー神である”ヴェルデ・シエロ”の血が騒ぐのだろう。
テオは少佐に声を掛けた。
「俺も行って良いかな? 何か鑑定が必要なものを見つけたら、ラボに持ち帰らないと・・・」
少佐がちょっと考え込んだ。死体が必ずあるとは限らない。もしかすると行方不明のセルバ野生生物保護協会員は、どこか別の場所に生きているのかも知れない。しかし、死体があれば・・・。彼女はテオを見た。
「一緒に来て下さい。」
「グラシャス。」
テオはキロス中尉を見た。
「君達は軍事訓練で捜索活動をするだろうけど、俺はジャングルに不慣れだから、護衛が必要だ。キロス中尉をバイトで雇っても良いかな?」
真面目なキロス中尉がムッとした。
「副業は認められない。」
ロホが笑った。
「それならボランティアでドクトルの護衛を頼めるかな、中尉。」
キロス中尉がロホを見た。そしてケツァル少佐を見た。少佐が面白そうに微笑んでいた。キロス中尉は座ったままで敬礼して、承諾を表した。
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