ケツァル少佐が不快そうな顔で窪地を見つめた。テオもそこが不自然な場所だと感じた。窪地は長さ1メートル半ほど、幅が1メートルほど、草が生えているが、最近生えたと思われる背の高さだった。周囲の土地も平で、人が踏んだ跡にも思えた。
少佐が携帯電話を出して、G P Sで位置を確認した。テオは彼女が否定してくれることを期待しながら尋ねた。
「ここに人が埋められているって言うんじゃないよな?」
少佐はアサルトライフルの台尻で地面をつついてみた。
「周囲の他の場所より柔らかいですね。」
そして彼女はテオが嗅ぎ取れない臭いを言った。
「油で何かを焼いた臭いが土の下から臭って来ます。」
テオは周辺を見回した。スコップの代用になりそうな物は目に入らなかった。
「掘ってみるか?」
「スィ。でも慎重に掘りましょう。」
少佐は荷物を下ろした。テオも下ろした。少佐が出したのは刃が広いナイフだった。
「私が掘りますから、貴方は周囲を警戒して下さい。少しでも変わった音が聞こえたら、教えて下さい。」
テオはライフルを渡され、ドキリとした。拳銃は扱った経験があるが、アサルトライフルは初めてだ。毎日目にしていても実際に己の手に持つのは初経験だった。
「安全装置はかかっているんだろ?」
「密林を歩くのに、安全装置をかけていると思いますか?」
言われて、腹を決めた。掛け紐を肩にかけ、構えた。少佐が手を添えて、持ち方を無言で指導してくれた。敵だと思ったら容赦無く撃て、と言うことだ。
そして彼女は地面に両膝をついて、ナイフで慎重に窪みの土を掘り始めた。
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