日暮れが近づく頃になって、テオとケツァル少佐はアンティオワカ遺跡のベースキャンプに戻った。2人共疲れていたが、焚き火の臭いとアスルが作るスープの匂いに、元気を取り戻した。焚き火のそばにいたのはアスルとデネロス少尉で、キロス中尉とギャラガ少尉は遺跡の見回りに出ていた。最後に加わったロホはテーブル代わりの石の上に広げた地図に印を書き込んでいた。
いつもの様に少佐とテオに真っ先に気づいたデネロスが喜んで駆け寄ったが、すぐに何か嫌な物を察したのか、立ち止まり、それ以上近づくのを躊躇う様子を見せた。ケツァル少佐はすぐに部下の異変に気が付いた。
「私達に穢れが付いています。体を洗う迄近づかない様に。」
と彼女は部下達に宣言し、テオを促して足速にフランス発掘隊が見つけていた井戸へ向かった。リュックサックを下ろして、中に入れてあったペットボトルを取り出した。中身は液体ではなく土だった。それを地面に置くと、ロホがやって来た。宗教家の家系の出身らしくペットボトルの中身の正体を見抜いた。
「死体ですね?」
「スィ。焼かれて砕かれていました。」
ケツァル少佐は異性に裸身を見られても気にしない人なのだが、彼女が服を脱ぎ出すと、ロホは慌てて背を向けた。テオも服を脱いだ。
「浄化出来るかい、ロホ?」
「これから害のある気は感じられません。多分、この”人”は亡くなった場所に留まったままです。でも一応お祓いをしておきます。」
ロホはペットボトルを慎重に手に取って持ち去った。
テオとケツァル少佐は井戸の冷たい水を浴びて、体から泥汚れを落とした。
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