2024/01/10

第10部  穢れの森     15

  テオはセルバ野生生物保護協会のロバートソン博士の携帯電話にかけてみた。協会は日曜日なので休みの筈だ。ロバートソン博士はまだ朝の家族団欒で食事中だった。電話の向こうから聞こえる物音に、テオは悲しい要件でかけたことを後悔した。
 簡単に挨拶してから、彼は尋ねた。

「オラシオ・サバン氏は、アマン地区の出身でしょうか?」

 ロバートソン博士はちょっと驚いた。

ーーそうです。どうしてご存知なのですか? 彼の家族にお会いになったのですか?
「ノ、会うのはこれからになりますが、先に確認しようと思いました。彼はもしかするとお守りを持っていませんでしたか? 女神アマの迷子防止のお守りを・・・」

 するとロバートソン博士の声が震えた。

ーー彼は、ええ、いつも持っていました。小さなコインの形のお守りで、ネックレスのヘッドにして首から下げていました。

 テオが数秒間黙り込むと、彼女は急かすように質問して来た。

ーーお守りを見つけたのですか? どこにありました? サバンは無事ですか?

 テオは深呼吸した。

「まだ確定した訳ではありませんが、サバン氏ではないかと思われる遺体を発見しました。」
ーーどこで?!
「コロン氏の遺骨が発見された場所から1キロほど南へ入った森の中です。まだ大統領警護隊が調査中ですが・・・」
ーー憲兵隊ではなく、大統領警護隊が見つけたのですか?
「スィ。」

 ロバートソン博士の啜り泣く声が聞こえた。大統領警護隊が見つけたのなら、それは本当にサバンなのだろう、と思ったに違いない。
 テオは彼女が落ち着くのを待って、言った。

「お守りをサバン氏の家族に見せて確認したいのですが、会えるでしょうか?」

 

0 件のコメント:

第11部  紅い水晶     21

  アンドレ・ギャラガ少尉がケツァル少佐からの電話に出たのは、市民病院に到着して患者が院内に運び込まれた直後だった。 「ギャラガです。」 ーーケツァルです。今、どこですか? 「市民病院の救急搬入口です。患者は無事に病院内に入りました。」  すると少佐はそんなことはどうでも良いと言...