「では・・・」
テオは深呼吸して、謎の石を掴んだ。右手の掌に載せて、暫くじっとしていた。
最初はひんやりとした鉱物の感触だけだった。やがて体温で石が温まったのか、冷たさを感じなくなり、温かい感じがした。石を眺めていると、なだらかなカット面がキラキラ光って美しい。少し頭がぼーっとしたが、それは一瞬で、すぐ元に戻った。右肩が幾分軽くなった感じだ。
「何も起こらないが・・・」
しかし、”ヴェルデ・シエロ”達の反応は違った。少佐が囁き掛けて来た。
「石を下に置いてもらえますか?」
「スィ」
テオは石を机の上に戻した。そして初めてロホとギャラガが険しい目つきで石を見つめていることに気がついた。少佐も表情が固かった。
「どうした?」
「貴方は何も感じませんでしたか?」
逆に問われて、テオは首を傾げた。
「特に言及しなければならないことはなかった・・・」
ギャラガが石を指差した。
「よく見ないとわかりませんが、少しピンク色になっています。」
「え?!」
テオは上から見たり、横から見たり、机の面の高さから見て、本当に微かに石に色がついていることを確認する迄5分ほど要した。
「そう言われれば、色がついている気がする・・・」
「ついています。」
ギャラガが言い張った。テオは掌を見た。傷も何もない。
「俺の血の色か? 吸われた跡はないが・・・」
「獲物に傷をつけずに血を吸い込むのでしょう。」
とロホが恐ろしいことを口にした。
「こんな石は初めてです。」
少佐が石を麻袋に入れた。
「本部に持って行きます。私達の知識では手に負えないと判断します。」
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