マハルダ・デネロス少尉は報告のまとめを続けた。
「神官達がエダの神殿に行った目的は定かではありませんが、あの神殿は神殿の人事を決める場所です。」
テオはその「エダの神殿」がどこにあるのか知らなかった。初めて耳にする場所だった。しかし大統領警護隊の友人達は知っていることが常識のように、何も言わずに黙ってデネロスの言葉を聞いているだけだった。
「神殿の人事とは、即ち、新しい神官の選出、新しいママコナの決定、新しい神殿女官や従者の採用を決めることです。現在、神官は大神官代理の他各部族代表が全員揃っています。ママコナはご健在です。女官や従者に欠員が出た話は聞いておりません。ですが・・・」
デネロスの表情が少し曇った。
「これは、私が個人的に親しい女官から聞いたことで、どうか他言無用に願いますが・・・」
彼女は上官のケツァル少佐を見た。
「大神官代理のお体の具合がよろしくないとのことです。」
テオはその場の空気が少し硬くなった気がした。友人達がデネロスが出した情報に驚いたのだ。アスルが尋ねた。
「どんな風に、とは聞いていないのか?」
「友人は不確かなことを私に言う筈はありませんので、彼女は大神官代理が不治の病に侵されているのではないか、と考えているのです。 それで、 最近起きた大統領府厨房の事件が関係しているのではないかと心配して私に打ち明けてくれました。」
「”サンキフエラの心臓”は大神官代理には効かなかった。あの石は”ティエラ”専用だから・・・しかし神官達はその事実をその時まで知らなかった?」
とテオはつい口を挟んだが、誰も咎めなかった。
「石の効能は役に立たなかった。だから・・・」
とケツァル少佐が話を継いだ。
「遊撃班のルーク・アイオラ少尉は神殿に召喚され、特別任務を命じられたのです。」
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