ケツァル少佐は直ぐに答えずに、神殿の建物の方を見た。
「神官達がこちらに集まっておられますね?」
「スィ。」
「でも大神官代理は居られない。」
エダ神殿を守る神殿近衛隊のキロス中尉は無言で少佐を見つめた。
「重要な会議が開かれるのに大神官代理がいらっしゃらないのは、不思議ですね。」
「少佐・・・」
キロス中尉が硬い表情で言った。
「我々は神官と会議に関する会話はしません。」
「そうでしょう、警護と議事内容は関係ありませんから。」
少佐は中尉に視線を向けた。
「でも、おかしいと思われませんか? 大神官代理抜きで会議をなさるなど。」
「それは・・・」
キロス中尉は少し困惑して、デネロス少尉をちらりと見た。
「こちらで会議をなさるなど、滅多にないことですし、ここで会議を開かれる場合は・・・」
彼女が言い淀んだので、デネロスが口を挟んだ。
「この神殿で会議をなさるのは、神官が入れ替わる時ですよね?」
上官同士の会話に口を挟んだので、キロス中尉がデネロス少尉を睨みつけたが、ケツァル少佐は無視した。
「大神官代理が来られず、会議を開くと言うことは、大神官代理が交代されると言うことですね?」
「私にはなんとも・・・」
キロス中尉は困ってしまった様だ。そして改めて質問して来た。
「少佐は何が目的でこちらへ来られたのですか?」
ケツァル少佐は今ではすっかり大統領警護隊文化保護担当部で出した推論の正さを確信した。
「大神官代理がご病気で引退されることを確かめに来ました。」
キロス中尉はまた硬い表情に戻り、神殿を見た。そして囁いた。
「神殿から不穏な気が発せられています。私達近衛兵はそのために不安定な思いを感じています。」
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