最初にエダの神殿から出て来たのは、髪が白くなりかけた男と少しぽっちゃり体型の男だった。服装はアスマ神官とカエンシット神官が着ているのと同様の貫頭着にベルトを締めた神官服だった。キロス中尉が会所から出て、彼等を迎えた。
「お呼びだてして申し訳ありません。」
2人の神官は用心深く足を進めた。アスマ神官とカエンシット神官が張った結界を案じているのだ。サスコシ族の結界を恐る能力の弱い部族で2名の神官・・・カイナ族か、とケツァル少佐が思った時、セデス少尉が囁いた。
「頭が白いのがカイナ族のフレータ神官、もう片方はグワマナのロムベサラゲレス神官です。」
ケツァル少佐はもう少しで笑そうになった。フレータもロムベサラゲレスも知人にいる名前だ。恐らく神官達は彼等の親戚だ。我が一族はなんて狭い世界に住んでいるのだろう。
キロス中尉が2人に声を掛け、挨拶してから会所に案内して来た。建物に用心深く足を踏み入れた2人は、縛られて目隠しされているアスマ神官とカエンシット神官を見て、立ち止まった。
「この2人を逮捕したのですか?」
とフレータ神官が感情を抑えた声で尋ねた。ロムベサラゲレス神官の方は、明かにホッとした表情を浮かべた。
「では結界は消えたのですね?」
「実は結界は消えていないのです。」
とケツァル少佐が言った。
「お2人を通すために私が一時的に結界を消しました。もう張り直しています。」
2人の新しく現れた神官は彼女を振り返った。ロムベサラゲレス神官が微笑んだ。
「もしや、ケツァル少佐ではありませんか?」
「スィ。お初にお目にかかります。」
少佐は軍隊式に敬礼で挨拶した。そしてデネロスは紹介しなかった。それは彼女を軽んじたのではなく、彼女の名前を味方と確定した訳ではない人物に教えたくなかったからに過ぎない。
「他の神官はどうされています?」
と少佐が質問した。フレータ神官が神殿を入り口のドアの向こうに見えるかの様に振り返った。
「すぐにブーカとオクターリャ、マスケゴが来ます。残念ながらもう一人のカイナの同僚は来ないかも知れない。彼はそこの・・・」
彼は縛られている同僚を振り返った。
「サスコシの2人と同じ思想を持ちまして・・・恥ずかしいことに、今日のこの失態を招いた原因となる悪き思想です。」
「何が悪き思想か!」
とアスマ神官が呟いた。
「我々は呪い師でも預言者でもない、神の一族ぞ! ”ティエラ”どもに死んだ民族と言われ続けて闇の世界で生きてきた。もうたくさんだ! 今こそ強い指導者の元でセルバの指導権を取り戻すのだ!」
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