2022/05/23

第7部 渓谷の秘密      7

  文化・教育省は入居している雑居ビルの改修工事を行う決定を下し、工事期間中はシティ・ホールに臨時オフィスを設けた。シティ・ホールで行われるイベントは土日に開催されることが多いので、週末は机やI T機器の移動で大忙しだ。だから大臣は観客席の半分をオフィス代用に使い、半分だけ市民に開放することにした。
 大統領警護隊文化保護担当部は文化財・遺跡担当課と境界のない狭い空間に同居した。元々同じフロアにいる仲間だから、その件に関して問題はなかった。気に入らないのは、通路を隔てて他のフロアの部署がいることだった。それぞれのフロア毎に仕事のやり方が違うし、陳情に来る市民の要件も違うので、かなり騒々しい職場環境だ。こんな場合、下っ端が一番損をする。直接市民と接する仕事をしている彼等を置いて、上司達は早々に静かな場所へ逃げてしまうのだ。文化保護担当部もアンドレ・ギャラガ少尉とマハルダ・デネロス少尉が取り残され、ケツァル少佐とロホは出張を決め込んだ。その出張の内容が、悪霊を封じ込めた墓探し、と聞いて、ギャラガとデネロスは内心下っ端で良かった、と思った。監視業務と違って森の中を歩き回るのはかなりしんどい仕事だ。都会育ちのギャラガは気を放出していればヒルや毒虫が寄って来ないと承知してはいるものの、それでも慣れない。樹木で空が見えない、見通しが利かない薮の中を歩くのも好きでなかった。デネロスは大学の研究課題が図書館の古書を必要としていたので、都市から離れたくなかった。だから留守番を命じられて、2人共ホッとしたのだ。
 ケツァル少佐とロホはジャングルでの活動準備を整えた。参加要請の理由に納得出来ないテオドール・アルストも同行だ。

「遺伝子学者の俺が、どうして蟻塚の土壌分析を行わないといけないんだ?」

 少佐とロホが視線を交わした。”心話”だ。ロホが咳払いしていった。

「貴方は霊の声を聞けます。我々には聞こえない。」
「だけど、君達は霊を見ることが出来るじゃないか。」
「封印されている場所が破壊されなければ霊は出て来ないんです。我々の今回の任務は霊封じではなく、霊が封じられている場所を探して地図に載せるだけです。」
「つまり、俺は警察犬の役目をするのか?」

 少佐とロホが「スィ」と頷いた。

「土壌分析は大学に出張の理由を誤魔化す手段に過ぎません。」

 ロホは地質学の教室から借りてきた土壌分析のサンプル容器と薬剤が入ったキットをテオに渡した。
 少佐が机の上に地図を広げた。

「悪霊の被害に遭ったトロイ家の人々の行動範囲は大体このくらいです。」

 彼女は赤ペンでトロイ家の場所にバッテンを描き、それから地図上で半径5キロメートルの大きな円を描いた。

「これは狩猟の範囲ですから、農民の彼等は実際はもっと狭い範囲で行動していたと思われます。」

 彼女はタブレットで衛星写真を出し、拡大して見せた。

「畑がここ、これが現在の耕作地です。こちらの空き地が、次の開墾地の筈です。今回の悪霊はここにいたのだろうと推測されるので、この開墾地を中心に捜索します。」
「アスルやンゲマ准教授達がいる遺跡は?」
「この渓谷の奥です。」

 ロホがペン先で谷間の奥まった地点を指した。

「ここに准教授の見立て通りにサラがあるなら、ここで有罪判決を受けた罪人は処刑のために集落から離され、森の中の牢に入れられたのでしょう。処刑方法はいろいろありますが、”風の刃の審判”で重傷を負った人間が有罪になったのですから、瀕死の状態か、既に死亡して運ばれたと考えられます。牢がそのまま墓となったと推測しても構わないかと・・・」

 ロホは考古学の先輩のケツァル少佐を見た。少佐が頷いた。

「生き埋めにされた人が悪霊になった可能性が高いですね。」
「嫌な話だな。」

とテオは囁いた。

「トロイ家の人々はそんな昔のことを知らずに住み着いたんだな?」
「カブラ族は遺跡が建設された場所より移動して、本来はもっとデランテロ・オクタカスに近い場所に住んでいるのです。トロイ家はきっと30年前に政府が出した入植助成金をもらって開墾を始めたのでしょう。大昔、そこがどんな土地だったのか知識がなかったのです。部族も現在の場所に移住して数世紀経っていますから、先祖の土地で何が行われていたか、どんな土地なのか、言い伝えすら残っていないのです。」

 少佐は宗教学部で民間伝承などを研究しているウリベ教授から確認を取っていた。文書化された歴史の記録を残さない部族の研究は難しい。口述で聞き取るしかない。特に白人が入植してから移住や迫害、言語統制が行われ、多くの伝承が失われた。ウリベ教授はカブラ族の多くがスペイン語を話し、部族固有の言語を話せる人が殆ど残っていないことを嘆いていた。彼女が録音したのは5つの昔話だけで、生きた会話などはなかったのだ。
 テオは念の為に質問した。

「カブラロカに反政府ゲリラはいないよな?」

 少佐が答えた。

「多分。」



2022/05/22

第7部 渓谷の秘密      6

  ケツァル少佐が自宅アパートに帰ると、ちょうどテオドール・アルストがテーブルに着いてカーラの給仕で夕食を始めようとしていた。彼はカーラが玄関へ出迎えに行ったので、彼女が帰ったと知った。

「始めるのを待っているよ。」

と彼が声をかけたので、少佐は急いでバスルームに入り、埃だらけの服を脱いでシャワーをサッと浴び、新しいTシャツとざっくりしたコットンパンツに着替えてダイニングに入った。テオは律儀に料理に手をつけずに待っていた。カーラがスープを温かいのと取り替えましょうかと声をかけたが、構わないと断った。
 向かい合って、赤ワインで軽く乾杯した。

「今日は文化・教育省で大変なことが起きたんだってな?」

 テオがトイレ詰まりを思い出させる発言をしたので、少佐はちょっと顔を顰めた。

「明日もビルを使えないのであれば、場所を移して業務しなければなりません。省庁そのものを引っ越した方が良いでしょうね。」

 インフラ整備にお金をケチる政府に不満な少佐はワインをごくりと飲んだ。そして話題を変えた。

「今日は急な出張がありました。」
「うん、カーラから聞いた。」
「命令を出したのは、”名を秘めた女の人”です。」
「え?!」

 テオの食事の手が止まった。全く予想外の人物が出て来たので、驚いたのだ。少佐とママコナがテレパシーで会話出来ることは知っているが、ママコナから命令が出たなんて初めて聞いた。これは、この部屋の外でする話ではないな、と彼は感じた。カーラは慣れているのか、何も聞かなかったふりをして、メイン料理を出し終えると、帰り支度を始めた。デザートまで居るつもりはないのだ。テオは少佐に断り、彼女を階下迄見送り、タクシーに乗車するのを見届けてから部屋に戻った。
 少佐がメインの肉の塊を大小2つに切り分けていた。小さい方をテオの皿に取って、彼女は残りが載った皿を自分の前に引き寄せた。テオの肉の3倍はありそうだ。彼女は超能力を使ったな、とテオは思った。

「ママコナはどんな命令を君に出したんだい?」
「悪霊の浄化です。」

 即答してから、少佐は説明した。

「カブラロカ渓谷近くの地元民の家で殺人事件が起こりました。その家の人が森の中にあった罪人の墓を何らかの理由で壊してしまい、悪霊となった罪人の霊が少年に取り憑き、家族を殺害してしまったのです。」
「それは酷いなぁ・・・」

 テオは正気に帰った時の少年の心の傷を思い計って気が滅入りそうになった。しかし少佐は感情を交えずに説明を続けた。

「偶然大統領警護隊遊撃班と警備班が近くで軍事訓練を行なっていました。彼等は惨劇を逃れた子供を保護し、その子を追ってきた憑き物憑きの少年を捕え、カルロ・ステファン大尉が悪霊を木偶に封じ込めました。彼は自力で浄化する自信がなかったので、木偶を持ち帰って上官に任せようと考えたのですが、ママコナが悪霊が首都に入ることを嫌がり、私に悪霊を首都に入れるなと訴えて来たのです。」
「ちょっと待った・・・」

 テオは心に浮かんだ疑問を素直に口に出した。

「どうしてママコナは君に命令したんだ? カルロの上官はセプルベダ少佐だろ?」
「セプルベダは男性です。」

 とケツァル少佐は即答して、彼の質問を終わらせようとした。テオは、何故男では駄目なのか訊こうとしたが、少佐は話を続けた。

「私はデランテロ・オクタカスまで行く時間がなかったので、カルロにロカ・ブランカへ回れと命じました。カルロはエミリオ・デルガドと2人で仲間と離れ、ロカ・ブランカで私と合流し、ビーチで木偶に封じ込めた悪霊を3人の力を合わせて浄化しました。」
「浄化出来たんだな。」
「幸いロホの助力を必要とせずに済みました。」
「おめでとう。」
「でも、まだ森の中に同じような悪霊を閉じ込めた墓がありそうです。」

 テオは肉を噛みながら考えた。もしかして、この出張報告はここから本題に入るのではないか?

「もしかして、これから悪霊を封じ込めた墓を探しに行くのか?」
「探しておいた方が良いでしょう。全てを浄化させる必要はありませんが、今後地元民が避けて通れる印を付けておくべきです。」
「どうやって探すんだ? ジャングルの中だろう? それにカブラロカって、現在アスルが発掘隊の護衛で行っている奥地だよな?」

 テオの知識では、グラダ・シティからデランテロ・オクタカス迄は国内線の航空機で行き、そこからオクタカス遺跡迄車で半日かかる距離だった筈だ。飛行機は毎日飛んでいる訳でなく、定期便は週に2回、月曜日と木曜日だけ、後は農家などが共同で料金を支払って農産物を運ぶチャーター便が偶に飛ぶだけだ。車でグラダ・シティから行けば、実際の距離ではアスクラカンより近いが所要時間は倍かかる悪路だ。そのデランテロ・オクタカスの村からカブラロカ渓谷はオクタカスより遠いと聞いていた。
 少佐が彼に尋ねた。

「蟻塚が赤いと言うのは、土の色が赤いのですよね?」
「俺は蟻の専門家じゃない。だが、蟻塚は土で出来ているな、普通は・・・」
「赤土でないのに赤い蟻塚が出来ていたら、それが悪霊を封じ込めた墓だそうです。」
「誰が言ったんだ?」
「ムリリョ博士。」

 テオは黙り込んだ。この会話は、彼に墓探しに参加しろと暗に言っているのだ、と敏感に察しながら・・・。


2022/05/21

第7部 渓谷の秘密      5

  グラダ・シティに帰った時、まだ太陽は沈んでいなかった。明るい夕暮れの街中をケツァル少佐はセルバ国立民族博物館に向かった。博物館の事務室に事前に電話をかけると館長であるファルゴ・デ・ムリリョ博士は在館だと言うことだったので、面会希望を伝えて、返事をもらう前に博物館に行ったのだ。面会を拒否する連絡はなかったので、博物館の駐車場に車を置いて、館内に入った。平日なので博物館は空いており、職員が閉館時間迄まだ1時間あると言うのに、終業準備に取り掛かっていた。少佐は緑の鳥の徽章を提示し、入館料を払わずに中に入った。
 奥の事務室に入り、早くも帰り支度を始めている職員の間を通り、さらに奥の館長執務室の前へ行った。ドアをノックすると、「入れ」と声がした。
 ムリリョ博士は左の椅子にミイラを一体置いて、机の上に置いたラップトップで仕事をしていた。書類を作成しているらしく、ケツァル少佐が挨拶しても頷いただけだった。それで少佐はマナー違反になるが、彼女から要件を切り出した。

「カブラロカ遺跡について教えて頂きたいことがあります。」
「あそこは未調査だ。」

 ムリリョ博士は顔を上げようともしない。彼が急いで作成しなければならない書類とは、政府に提出する予算案だろうか、と少佐は考えた。セルバ共和国政府の公金支出の申請締め切りはとっくに終わっていたが、ムリリョ博士の様な大物は多少遅刻しても受け付けてもらえるのだ。

「あの遺跡はサラではないのですか?」
「ンゲマはサラだと期待して掘っているが、まだ結果報告が来ていない。」
「サラであった場合、処刑された罪人は何処に葬られたのでしょう?」

 ムリリョ博士の手が止まった。老”ヴェルデ・シエロ”は顔を上げて、少佐を見た。

「儂はあの場所が現役であった時代の風習など知らぬ。カブラ族の先祖が築いたのであろう。カブラ族に訊けば良い。」

 少佐の質問の意図を尋ねようともせずに、博士は再びラップトップの画面に視線を戻した。少佐はもう少しだけ粘ってみた。

「先祖の風習を知らなかった為に、カブラ族のある一家に悲劇が起こりました。」
「ならば・・・」

 博士はそれでも顔を上げてくれなかった。

「ウリベに訊いてみろ。あの女はそう言う風習を調べているのだからな。」

 彼は卓上の電話を取った。内線で誰かを呼び出し、

「大臣のアドレスは何だったか?」

と訊いた。この場合の大臣は文化・教育大臣だ。 大臣宛の書類だ。やはり予算案なのだろう。事務員の回答を聞き、博士は「グラシャス」と一言囁き、電話を終えた。そして教わったアドレスに書類を送信した。
 少佐はその作業が終るまで辛抱強く待っていた。ムリリョ博士は若い人々がどんなに長く待たされても気にしない。飽く迄我流を貫き通す人間だ。そして少佐も辛抱強い。相手の性格を知っているから、決して急かさないし、諦めない。
 博士が遂にラップトップを閉じた。仕事を終えたので、帰り支度を始めた。もうすぐ閉館時間だ。少佐が声をかけた。

「カブラ族の農夫一家が何らかの悪霊を知らずに目覚めさせてしまい、取り憑かれた若い息子が両親と祖父を鎌で惨殺し、逃れた弟も殺そうとジャングルの中を追ったそうです。弟は偶然大統領警護隊遊撃班の野外訓練部隊に遭遇して保護され、追跡して来た兄は部隊に確保されました。ステファン大尉と遊撃班が悪霊を若者から追い出し、木偶に封じました。ステファンは上官に浄化を依頼するつもりでしたが、ママコナが悪霊を首都に入れることを嫌がり、私が浄化を依頼され、ロカ・ブランカの海岸で処理しました。
 同様の悪霊がまだカブラロカ遺跡の近辺に封じられているかも知れないと懸念が残ります。探す手立てをご存じでしたら、ご教授下さい。」

 考古学の弟子として、”ヴェルデ・シエロ”の若衆として、少佐は博士に教えを請うた。博士は鞄に書類を詰め込みながら言った。

「赤い蟻塚を探せ。」

 それだけだった。

2022/05/19

第7部 渓谷の秘密      4

  ステファン大尉は海岸で直属の上官セプルベダ少佐に電話をかけて、彼とデルガド少尉が遅れて帰還する理由を報告した。彼等2人が他の部下達と別行動を取る旨は既に伝えてあったので、今度の電話の要件は木偶をロカ・ブランカで処理しなければならなかった理由の報告だ。”曙のピラミッド”の聖なるママコナが木偶をグラダ・シティに持ち込むことを拒んだと聞き、セプルベダ少佐は「仕方あるまいよ」と呟いた。

ーーあのお方は首都を守らねばならないからな。取り憑かれる人間が”シエロ”ならあのお方も直ぐに誰が被害者か察知出来るが、”ティエラ”が被害者の場合は誰に悪霊が取り憑いてしまうのか、あのお方も我々もわからない。実際に被害者が別の人間を襲う迄わからないからな。人口が少ない地方で被害を最小限に食い止めたいとお考えになられたのだろう。
「しかし、”名を秘めた女の人”が遊撃班でも警備班でもなく文化保護担当部の指揮官に処理を命じられたのは・・・」

 ステファン大尉は上官の顔を潰したのではないかと、心配した。しかしセプルベダ少佐はいつもの如く、カラカラと明るく笑った。

ーー私は女性ではないぞ、ステファン。当代のママコナは困ったことが起きれば、まずは女性達に接触なさる。きっと女同士互いに感応しやすいのだろう。厨房でも君達男ではなく女性隊員に食事の我儘を仰っていただろう?
「あー・・・そう言えば・・・」

 ステファン大尉は苦笑した。彼自身はママコナのテレパシーを読み取れないが、神殿が本部厨房と直結しているので、女官が文書で大巫女様の食事のリクエストを持って来ていた。但し、ステファンや男性の専属厨房係隊員ではなく、女性隊員宛てばかりだった。

ーー大きな声では言えないが、巫女様はお年頃の女性だからな。

とセプルベダ少佐は言った。生まれて直ぐに神殿に迎えられ、一度も外に出たことがない女性の人生をちょっと考えたのだろう。ママコナは世界を見る能力があると言われている。だがピラミッドの中で瞑想して見る世界ではなく、実際に海の音や草原を渡る風や山の厳しさを体験なさりたいのではないか、とステファンはちょっぴりママコナに同情を覚えた。古代から幾世代もそうして閉ざされた空間で一生を終えて来た女性達を思った。そして姉や妹やマハルダ・デネロスがそんな境遇に生まれなくて良かったとも思ってしまった。

「半時間休憩を取ってから、帰還します。」

 ステファン大尉は上官に告げて電話を終えた。
 砂浜の外れで、古い漁船の影に入ったケツァル少佐とデルガド少尉が休んでいた。悪霊浄化で力を使ったので、休んでいるのだ。少佐はロホにお祓いが無事に終わったことを連絡して、ステファンが近づくと、「貴方も休みなさい」と言った。ステファンは部下を見た。デルガド少尉はあろうことかケツァル少佐のすぐ横で猫の様に丸くなって眠っていた。長身を胎児の姿勢にして本当に寝ていた。ステファンが眉を上げたので、ケツァル少佐が少尉を庇った。

「グワマナ族のエミリオにすれば、さっきのマックス攻撃波はかなりの消耗です。大目に見てあげなさい。」
「わかっています。」

 姉の隣は俺の場所なんだ、とステファン大尉は心の中で毒づいた。デルガドに他意がないとわかってはいたが。それに今、少佐の隣が空いていたとしても、彼が座れば少佐は鬱陶しがるだろう。ステファンは少し離れた影の中に腰を下ろした。

「ドクトルと上手く行っていますか?」
「余計な質問はしなくてよろしい。」

と少佐はつっけんどんに言い、それから答えた。

「一緒に住んでいると言うだけで、以前と変わりませんよ。」

 つまり、上手く行っているのだ。安堵と嫉妬が同時に起きて、ステファンは未練たらしい己にうんざりした。テオドール・アルストとケツァル少佐の同居は文化保護担当部に何ら変化を齎さなかった。つまり、それだけあの北米からやって来た白人は仲間に溶け込んでいるのだ。アスルがテオと同居を始めた時も同じだ。寧ろそれまで宿無しだったアスルが遂に定住したか、と仲間達は安堵したのだ。ステファンが文化保護担当部から出て行った時の方が仲間のショックは大きかったのだ。
 少佐が優しい目で、眠るエミリオ・デルガド少尉を見下ろしていた。ステファンはふと不安になった。少佐がデルガドを文化保護担当部に欲しいと言い出したらどうしよう? デルガドは結構文化保護担当部の仲間に気に入られている。気難しいアスルさえ、彼を家に泊めるし、チェッカーの相手をさせるし、マハルダ・デネロスもデルガドには優しい。だがステファンにとっても頼りになる部下だ。超能力の強さが遊撃班で一番弱いグワマナ族にも関わらず、デルガドは努力と才能で他部族の同僚と同等の活躍をしてみせる。そこが純血種の凄いところだ。異人種ミックスのステファンには必要不可欠な補佐だ。

「エミリオをそんな目で見ないで下さい。」

 ステファンはついそう口に出して言ってしまった。少佐が彼を見た。暫く眺め、それから小さく噴き出した。

「この子を取られたくなければ、指揮官としての腕をもっと上げなさい。」

 姉らしい言葉を残して、彼女は立ち上がった。

「先に帰ります。貴方はもう少し休息が必要です。無理せずに戻りなさい。」


第7部 渓谷の秘密      3

  ロカ・ブランカに到着したのは昼過ぎだった。観光地として成り立っている町ではないので、ハイウェイから離れると店らしき施設は殆ど見当たらない。ケツァル少佐は前年に宿泊した宿屋へ行った。昼間は食堂として営業しているので、そこで軽く昼食を取った。女性の一人旅は珍しいのか、客や従業員の目を集めたが、彼女が持つ独特の雰囲気、つまり「この女は只者ではない」感じが男達に威圧感を与えた。それは決して彼女が尊大な態度を取ったのではなく、彼女が”ヴェルデ・シエロ”の気を放っていたからだ。普通の人間達は、彼女が何者か知らなくても気軽に近づいてはいけない存在だと、本能的に察した。気を放つことは”ヴェルデ・シエロ”にとって「気を緩めている」場合と「警戒している」場合とに別れるが、この時少佐は気を緩めていた。周囲に彼女の敵となりうる存在が何もなかった。
 デランテロ・オクタカスからロカ・ブランカ迄どれだけ時間がかかるのか見当がつかなかった。幸いシエスタと言う習慣があるセルバ共和国では、店がどんなに混み合って席順を待つ人が外で並んでいようが平気で店に長居出来る。そしてこの時、ロカ・ブランカの宿屋の食堂はガラガラだった。地元の人間が数人カウンター席で食事の後のお喋りに興じているだけだったので、少佐もコーヒーを注文して窓から海を眺めてぼんやり座っていた。
 沖にある白い岩が町の名前の由来だ。その岩に打ち寄せる波頭を見るともなしに眺めていると、宿屋の外で軍用ジープのエンジン音が近づいて来て停車した。
 少佐は顔を戸口に向けた。開放されたままのドアの向こうから1人の長身の若者がやって来た。大統領警護隊の制服を着ていたので、食堂内の人々の間に一挙に緊張が走った。その隊員の顔を見て、ケツァル少佐は立ち上がった。若者が彼女の前に来て、気をつけして敬礼した。

「遊撃班ステファン大尉、デルガド少尉、只今到着しました。」
「ご苦労。」

 少佐も敬礼を返し、店主に紙幣を渡すと釣りを受け取らずにデルガド少尉と共に外へ出た。ジープの外にステファン大尉が立っていた。デルガド少尉が彼と同行した理由を彼女は漠然と察していた、デルガド少尉はロカ・ブランカより南のプンタ・マナ出身だ。このハイウェイ周辺の地理や裏道に詳しかった。恐らく彼が進んで運転手を買って出たのだろう。
 ステファン大尉は少佐に敬礼すると、ジープの後部へ顎を振った。

「荷物はあちらです。」

 教えられなくても、少佐にもわかった。ジープの後部から黒ずんだ煙が立ち上っている様な感じがした。ステファンが宿に入って来なかったのは、荷物から離れたくなかったからだ。目を離すと危険な存在だと彼は認識していた。
 少佐が”心話”を求めると、ステファン大尉はカブラロカ渓谷で起きた殺人事件や森の中で部下達が見つけた少年、飛行場に現れた憑き物付きの若者の話を伝えた。

「すると、その憑いていた物を移した木偶を貴方は今運んでいるのですね?」
「スィ。私の力では浄化出来ません。上官にお頼みするつもりでした。」
「セプルベダ少佐が浄化出来るレベルではありますが、”名を秘めた女の人”がそれを首都に持ち込むことを拒んでいます。」

 少佐は悪い気が立ち昇る様を嫌そうに眺めた。デルガド少尉は沈黙していた。純血種の彼にも見えているのだが、指導師の修行をしていないので、憑かれるのを防ぐことは出来ても祓うことは出来ない。恐らくステファン大尉と2人だけの道中、背後にあんな悪霊を積んでいては気持ちの良いドライブではなかったろう。

「力は大きくありませんが、汚れの程度が酷いです。新しい汚れの下に古い汚れが山積みされている感じです。きっと古い墓か何かに手を加えてしまい、封じ込められていた悪霊を出してしまったのでしょう。」

 ケツァル少佐は周囲を見回し、それから海岸へ車を出すよう命じた。
 ビーチは静かだった。元々地元民しか来ない海水浴場だ。平日に泳ぐ人は少なかったし、その日は少し波が高かった。
 3人の大統領警護隊隊員は砂浜に打ち上げられていた乾いた流木などを拾い集めた。それを砂の上に積み上げ、問題の木偶を布に包んだまま木の上に置いた。3人で取り囲み、少佐は言った。

「聖なる光を頭に思い浮かべ、木偶を見つめなさい。ステファンは出せるだけの結界能力を使うこと。デルガドは攻撃だけを考えなさい。」

 少佐が火種を作り、積み上げた枯れ木の山の下に入れた。暫く燻ってから、火が上がった。ステファンとデルガドは命じられた能力をマックスで出した。もしこの場面を目撃した”ティエラ”がいたら、彼等が光の筒の中に取り込まれた様に見えただろう。
 ステファンが築くグラダ族の結界の中で、デルガドの爆裂波が木偶に送り込まれた。布に包まれた木偶から黒い煙の塊の様なものが浮き上がった。少佐がそれに向けて浄化の呪文を唱えながら爆裂波をぶつけた。
 ドンっと鈍い音が響いた。木端と砂が四方八方に飛び散った。一瞬太陽の様に眩しい光を発し、木偶は消えた。
 ケツァル少佐、ステファン大尉、そしてデルガド少尉は砂の上に空いた浅い穴を眺めた。焦げた木片が散らばっていた。集めた枯れ木が全て一瞬で燃え尽きたのだ。

「質問してよろしいですか?」

とデルガドが口を開いた。少佐が「スィ」と答えた。少尉が質問した。

「あれは何だったんですか?」

 当然の質問だった。少佐はステファンを見た。

「カブラロカ遺跡の近くで事件が発生したと言いましたね?」
「スィ。」
「カブラロカ遺跡はまだ調査が始まったばかりですが、”ティエラ”の遺跡です。ハイメ・ンゲマ准教授が発掘隊の指揮をしています。」
「警護指揮官はアスルですね?」
「スィ。この際アスルは関係ありません。ンゲマが何を遺跡に求めているか知っていますか?」
「ノ」
「サラです。」

 サラは古代の裁判所だ。オクタカス遺跡はサラで裁判を行うために囚人を収監したり、裁判関係の役人が住んでいた遺跡だと考えられている。カブラロカも規模が小さいだけで、同じ様な場所だったのだろうとンゲマは推測しているのだ。

「”風の刃の審判”で有罪が決まった人間は大概処刑されました。処刑されなくても、岩を落として怪我をする程度で罪の重さを測ったのですから、有罪者はほぼ全員死んだことでしょう。その死骸を何処かに埋葬したのだとしたら、そこを掘った者に悪霊が取り憑く恐れがあります。」
「殺害された農夫の家族は、その墓を知らずに開墾したと?」

 ステファンが推量を述べると、少佐は頷いた。

「恐らく、知らずに何か傷つけるか、壊すかしたのでしょう。そして若い息子に取り憑いた。私は先刻若い男の気配を一瞬感じました。犠牲者の取り憑かれた息子は、悪霊となった罪人と年齢が近かったのだと思います。」

 デルガドが身震いした。

「そんな墓がまだあの森の中に残っているのではありませんか?」

 少佐は頷いた。そしてンゲマ准教授と学生達の無事を案じた。


2022/05/18

第7部 渓谷の秘密      2

  ケツァル少佐は腹違いの弟カルロ・ステファン大尉に電話をかけた。大統領警護隊遊撃班は警備班と違って時間は比較的自由だ。会議や危険な任務の遂行中でなければ、時間に関係なく出てくれることが多い。呼び出し音5回の後、ステファンの声が聞こえた。

ーー遊撃班ステファン大尉・・・

 姉からの電話だとわかっているが、彼女が私的用件で電話をかけて来る人間でないことを知っているので、役職で名乗った。ケツァル少佐も「ケツァル」と名乗った。

「今何処にいますか?」

 テレビ電話を使わないので、顔は見えなかった。背景が見えないが、背後の音が聞こえた。車のエンジン音で、車内にいるらしい。それも乗用車ではない。ステファンが雑音に負けない声で答えた。

ーーデランテロ・オクタカスからグラダ・シティに向けて車で半時間の場所です。

 そんな場所にいる理由は語らなかったし、少佐も訊かなかった。彼女は言った。

「そこからロカ・ブランカへ抜けられますか?」
ーーロカ・ブランカですか?

 ステファン大尉が怪訝そうな声を出した。ロカ・ブランカは東海岸線を通るハイウェイ沿いの漁村だ。観光客ではなく地元民御用達の海水浴場でもある。デランテロ・オクタカスとグラダ・シティの間を通るハイウェイから外れて海へ向かわなければならない。遠回りだ。

ーー何か用件があるのですか?
「出会った時に話します。貴方の荷物を必ず持って来て下さい。」
ーー部下は?
「部下が一緒ですか?」
ーー演習の帰りです。遊撃班の半数を率いています。

 少佐は考えた。ママコナは、「汚れ」を持っているのはステファンだと言った。部下は関係ないのだろうと思われる。

「部下はそのまま本部へ帰しなさい。それとも車両は1台だけですか?」
ーー指揮車両とトラックです。では、私だけが用件の対象ですね?
「スィ。 セプルベダ少佐には私から連絡を入れておきます。」
ーー承知しました。

 少佐は電話を切った。何時に落ち合うとか、何処で会うとか、そんな約束はしなかった。彼女はテオの居住区から彼女自身の場所へ戻った。手早く外出の準備をすると、カーラに言った。

「今夜帰りが遅くなるかも知れません。テオが帰ったら先に食べてもらって下さい。私は必ず今夜中に帰宅するつもりで出かけます。」
「わかりました。」

 カーラはいつも余計な質問をしない。軍人の家で働いていることを十分に承知していた。
 少佐は駐車場へ行き、彼女のベンツに乗り込んだ。車を道路に出してから、ステファンが拾った「汚れ」とは何だろうと考えた。彼女の唐突な要求に彼は素直に従うようだ。つまり、彼は己が「汚れ」を所持していることを自覚しているのだ。
 ママコナが首都に入れることを厭うもの。つまり、悪霊か? ケツァル少佐はロホに電話を入れておくことにした。車が大通りに出てしまう前に路駐して、ロホの携帯にかけた。
 ロホは2回目の呼び出し音の後で直ぐに出た。この男は文化保護担当部の仲間から電話がかかって来る時の着信音を他の人間からの着信音とは別に設定している。

ーーマルティネス・・・
「ケツァルです。貴方に知っておいてもらいたいことがあります。」
ーーどうぞ。
「”名を秘めた女の人”から要求がありました。カルロが持っている『汚れ』を聖都に入れるなと言うものです。」
ーーカルロの『汚れ』ですか?

 ロホの声に不安が混じったので、少佐は彼の誤解を解こうとした。

「カルロが汚れているのではなく、彼が持っている物が汚れていると言う意味です。本人も自覚している様でした。」
ーー”名を秘めた女の人”が厭う物ですね。祓いが必要なのですか?
「恐らく、カルロはセプルベダ少佐に祓ってもらうつもりで持ち帰って来る最中だった様です。でもママコナはその物がグラダ・シティに持ち込まれるのを嫌がっています。」
ーーセプルベダ少佐にはご依頼がなかったと言うことですか。
「”名を秘めた女の人”は女性に話しかける方が気楽な様です。」

 実際、”曙のピラミッド”の当代ママコナは女性の”ヴェルデ・シエロ”にお気楽に話しかけてくることが多い。まだ若いので、男性に話しかけるのが気恥ずかしいのかも知れない。ロホは男ばかりの兄弟の家で育ったが、父や兄達ではなく母親の方がママコナの声をよく聞いていた。母親は儀式に関わらない人だが、儀式に関する質問をママコナから受けて、ロホの父親に質問してから返答をしていた。
 ケツァル少佐は言った。

「貴方の助力が必要になった場合に、助けを求めます。よろしいですか?」
ーー承知しました。いつでもお呼び下さい。



2022/05/17

第7部 渓谷の秘密      1

  ケツァル少佐はグラダ・シティの自宅で、真昼間にも関わらず1人の時間を過ごしていた。休業するつもりなどなかったのだが、彼女が指揮する文化保護担当部が置かれている文化・教育省のビルがある問題を抱えてしまったからだ。文化・教育省が入居している4階建ての雑居ビルの何処かで、トイレの排水管が詰まってしまった。その結果、庁舎内は勿論のこと、ビルの1階で営業しているカフェ・デ・オラスも、少佐が一度も入店したことがないド派手な衣装を販売しているブティックも、省庁の職員達の主治医みたいな内科の診療所も、物凄い臭いに閉口し、一斉に休業してしまった。業者が呼ばれ、現在何処が臭いの発生源なのか調査中だ。
 職場に物理的な問題が発生した場合、セルバ共和国では場所を替えて仕事をすると言うことをしない。労働者は休んでしまう。休んだ分だけ給料が減るのだが、その間は別の仕事を見つけて働いても誰も文句を言わない。
 大統領警護隊文化保護担当部は文化・教育省文化財・遺跡担当課が休めば自分達も休む。発掘申請書は文化財・遺跡担当課が受理して文化保護担当部へ回すので、肝心の書類が回って来なければ文化保護担当部の仕事はない訳だ。
 少佐が休業を宣言すると、アンドレ・ギャラガ少尉は大学生に変身してグラダ大学へ行ってしまった。考古学部の通信制の学生だが、たまには全日制の授業を受けてみようと言う魂胆だ。マハルダ・デネロス少尉も溜まっていた大学の課題を消化する為に図書館へ行った。アスルはカブラロカ渓谷の遺跡の監視業務に就ているので不在だ。ロホも市内で行われている建設現場で出土した遺跡調査の巡視に出かけて、そのまま自宅へ直帰すると言っていた。
 ケツァル少佐は暇だった。文化保護担当部に届く申請書が丁度途切れたタイミングでトイレが詰まったので、彼女の仕事がなかった。だから彼女は自宅に帰った。突然の雇い主の帰宅に家政婦のカーラがちょっと迷惑そうだったので、彼女は「別宅」、即ちパートナーのテオが使っている居住区へ入った。テオはグラダ大学生物学部遺伝子工学科の准教授で、最近仕事が忙しい。隣国からの依頼で、20年前に隣国で起きたクーデターの犠牲者の遺体が数10体発掘され、身元鑑定のためのD N A分析に没頭していた。だから昼間、彼の居住区には誰もいなかった。
 テオの寝室は2人の部屋だ。少佐の寝室には時々女性の友人や部下が泊まるので、彼女は男性を入れない。男性客は彼女の居住区の客間に泊まる。テオの居住区の客間は、テオ個人の研究室になっていた。遺伝子抽出の為の機械や冷蔵庫、コンピューターが置かれている。大学で研究出来ないもの、つまりテオ自身の永遠のテーマとなる”ヴェルデ・シエロ”のD N A分析を行う部屋だ。少佐には理解出来ない世界なので、彼女は決してプライベイト研究室に入らない。例え家主であっても、彼女の慎みだった。
 暇を潰す為に、彼女はテオの居住区のリビングにいた。普段寛ぐ時は彼女の居住区のリビングを使う。それはテオも同じだ。だが、今はカーラが掃除をしたり、夕食の仕込みをしたりしている。家政婦の仕事の妨害をしたくないので、少佐はテレビも家具もないがらんとした部屋で、唯一置かれている古いソファの上に寝そべって帰り道に購入した雑誌を眺めていた。たまにはゴシップ紙も良いもんだ、と思っていると、突然頭の中でママコナが話しかけてきた。

ーー汚れを聖都に入れないで。

 ”曙のピラミッド”に住まう”名を秘めたる女の人”が聖都と呼ぶのはグラダ・シティのことだ。少佐はちょっと考えた。ママコナの言葉は時に抽象的で、話しかけられた”ヴェルデ・シエロ”は意味を理解するのに時間を要することが往々にあった。結局聖なる巫女が何を拒んでいるのか判明しなかったので、少佐は問いかけた。

ーー汚れとは?

 ママコナは短く答えた。

ーーエル・ジャガー・ネグロが持っている。

 そして彼女からのアクセスは途絶えた。
 少佐は雑誌を胸の上に置いて考えた。エル・ジャガー・ネグロは彼女の異母弟カルロ・ステファンのことだ。ステファン大尉が今何処で何をしているのか知らないが、何か良くない物を拾ったようだ。ママコナはそれが首都に入ってくることを拒んでいる。恐らくステファン本人に命令したいのだろうが、白人の血が混ざっているステファンにママコナの言葉は理解出来ない。だから姉のケツァル少佐に依頼が来たのだ。
 少佐は体を起こした。暇潰しが出来たようだ。まずは、ステファン大尉が何処にいるのか調べなければならない。

第11部  紅い水晶     24

  ケツァル少佐は近づいて来た高齢の考古学者に敬礼した。ムリリョ博士は小さく頷いて彼女の目を見た。少佐はトーレス邸であった出来事を伝えた。博士が小さな声で呟いた。 「石か・・・」 「石の正体をご存知ですか?」  少佐が期待を込めて尋ねると、博士は首を振った。 「ノ。我々の先祖の物...