ママコナは前に向き直った。足は速度を変えずに壁伝いに歩いて行く。
「私はカイナ族の生まれですから、ジャガーにはなれません。でもナワルは使える力の大きさを表すだけで、本質は一族全員が同じなのです。」
「そうでしょうね。」
「ですから、私も他のカイナ、グワマナも、ジャガーなのです。」
「俺もそう思います。」
「異人種の血が入った人々を一部の頭の固い人達は”ツィンル”と認めませんが、ナワルを誓える限り、彼等は”ツィンル”です。」
「でも、貴女の声を聞けないのでしょう?」
「人の姿の時はね・・・」
ママコナは意外なことを言った。
「ナワルでジャガーになっている時は、彼等も私と会話出来るのですよ。でもジャガーの言葉なので、人に戻ると記憶していても言葉に出来ないのです。だから、彼等は沈黙してしまいます。それで誤解されているのです。」
テオは歩きながら唖然とした。するとカルロ。ステファン大尉もマハルダ・デネロス少尉も変身している時はママコナの声を聞いて理解しているのだ。ただ思い出すのが難しい。人の言葉でないから・・・。
ママコナが彼に背を向けたまま、大きな溜め息をついた。
「今回の騒動を起こした神官達は、私と話をしようとしませんでした。私が男性と話をしたがらないと言って、私が話しかけても耳を傾けてくれなかったのです。恐らくオセロットの声を聞きたくないと言うジャガーの慢心でしょう。私は大神官代理に警告を送ったのですが、彼は私の言葉を軽く考えていました。叛乱など起こる筈がないと思ったのです。叛乱神官達の呪いを受けた彼は私に初めて助けを求めて来ました。私はこう答えるしかありませんでした。『友達が来るのを待ちなさい』と。」
彼女が立ち止まったので、テオも立ち止まった。ママコナが体ごと振り返った。
「友達とは、貴方と大統領警護隊文化保護担当部の人達です。」