「俺に協力出来ないってことか?」
シオドアは2人のセルバ人を見比べた。アスルが4杯目のワインをつごうとしたので、少佐が彼の名を呼んで止めた。
「飲み過ぎです。」
「すみません。」
アスルが素直に手を引っ込めた。少佐がテーブルの上で手を組んだ。
「サンプルの話を研究所に話さなければ、ことはもっと簡単だったのですが、貴方は情報を拡散させてしまいました。」
「それはどう言う・・・」
「貴方に消えてもらいましょう。」
シオドアは彼女の言葉の意味を推し測りかねて、見つめた。すると横からアスルが彼を呼んだ。
「シオドア・ハースト。」
「うん?」
振り返ったシオドアは、彼と真面に目を合わせてしまった。
こいつの目はなんて深い・・・なんて深遠な・・・
それが彼が意識を失う直前に頭で思った言葉だった。
ダイニングテーブルから崩れ落ちたシオドアを、席を立った少佐が眺めた。アスルが額の汗を拭った。メイドに聞こえない低い声で話した。
「不意打ちで何とか仕留めました。こいつ、ロホもカルロも歯が立たなかったんですよ。」
「脳の組織が”ヴェルデ・ティエラ”とは異なっているからでしょう。」
「しかし、我ら”ツインル”と同類と言う考えは持てません。」
「当然、”ツィンル”ではない。人造の人間です。でも、我々に救いを求めて来ました。」
「助けてやるのですか?」
「貴方は、手元に飛び込んで来た小鳥を鷹の前に放り出せますか?」
アスルは溜息をついた。
「俺なら、小鳥を食っちまいますがね。」
そしてキッチンに行った。メイドがデザートのタイミングを待ちながら雑誌を読んでいた。アスルは、カーラ、と彼女の名を呼び、振り返った彼女の目を見た。倒れかかった彼女を椅子から落ちないように支えてやり、楽な姿勢で壁にもたれかけさせた。
「少し休憩していてくれ。あの白人を隠さねばならん。」
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