ステファン大尉がケツァル少佐に言った。
「我々が調査に行きます。恐らく大統領官邸西館庭園の”穴”の”入り口”に当たるものがラス・ラグナス遺跡にあると思われるので、それを塞がなければなりません。何故”穴”が開いたのか原因の究明も必要です。現地に行きたいので、遺跡立ち入り許可を申請します。」
ロホがチャチャを入れた。
「申請用紙はここにないぞ。」
「事後申請でお願いします。」
少佐はパンケーキをパクリパクリと2口で食べてしまい、考え込んだ。ギャラガはびっくりしたが、ステファン大尉もロホも知らん顔をしていた。寧ろ、少佐の手が新しいパンケーキを求めて中央の大皿に伸びたので、ロホが素早くお代わりを少佐の小皿に取り分けて差し上げた。3枚目のパンケーキを食べてしまってから、少佐が顔を上げた。
「どうせ行くなら空軍の助けが要るでしょう?」
「スィ。遺跡へ行ける”通路”がありそうにないので、少佐から空軍へお口添えを頂ければ助かります。」
すると少佐がギャラガを見た。
「ブーカ族なのに”通路”を見つけられないのですか?」
ギャラガは赤くなった。彼が言い訳する前にステファン大尉が言った。
「彼はまだ修行の初期段階です。」
「そう・・・」
少佐が特に感動した風もなく頷いた。
「それで貴方が導師として彼を任されたのですね?」
え? とギャラガは驚いてステファン大尉を見た。大尉は彼を見なかった。見てもギャラガは”心話”を使えないのだから、心を読まれる心配はないのだが、つい習慣で相手に胸の内を明かしたくない時の行動が出たのだ。
少佐が立ち上がって、棚の上の携帯電話を取った。何処かの番号を押して、窓際へ歩いて行った。
ロホがギャラガにお菓子を食べるように勧めた。
「遠慮せずに食え。さもないと少佐に全部食われてしまうぞ。あの方は能力が強い分、エネルギー補給量も半端じゃないんだ。」
「彼女、今日はまだ能力を使っていないぞ。」
とステファン大尉が小声で囁いた。
「それに外出する気配もなさそうだ。」
「いいんだ、体重を増やされたら、こっちが悲しいじゃないか。」
男達が勝手な会話をしているのを少佐は片耳で聞きながらもう片方の耳で電話の相手の言葉を聞いていた。そして頷いた。
「では、その新型ヘリの試験飛行に隊員を3名乗せて下さい。時刻はそちらの準備次第で結構です。グラシャス。」
電話を切り、次に別の場所へかけた。挨拶をして、いきなり質問した。
「サン・ホアン村に行きたくないですか?」
1 件のコメント:
>体重を増やされたら、こっちが悲しいじゃないか
ロホ君、後が怖いぞ(笑
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