コンサートの客による帰宅ラッシュが一段落着くと、少佐が車外に出た。シティホールを一回りしてくると言うので、男達もお供しようと我先にと車外に出た。少佐が呆れた様に言った。
「誰がこの場所を見張るのです?」
テオはデルガドを見た。ギャラガも同僚を見た。
「君は歩き回った後だから、休憩しながら見張っていろよ。」
ギャラガがそう言うと、デルガドは建物の入り口を顎で指した。
「暑いから、あの中から駐車場を見ている。」
「結構。」
少佐が頷いた。テオが車のキーをデルガドに渡した。
「君には必要ないだろうけど、形だけでもキーを使うところを世間に見せておけよ。」
「キーぐらいいつでも使っています。」
デルガドは車を施錠した。ギャラガが左方向を指した。
「私は時計回りに歩きます。」
「それじゃ、少佐と俺は反時計回りに歩く。」
すると少佐が眉を上げた。
「私は貴方と行くと言った覚えはありません。」
「それじゃ、アンドレと行ってこいよ。」
テオは特に意地悪を言ったつもりはなかったのだが、彼女はツンツンして反論した。
「貴方がピューマに襲われたら、後の目覚めが悪いではないですか。」
「別にいつも大統領警護隊に守ってもらうつもりもないけどな。」
と言いつつ、テオは腕を差し出した。少佐はちょっと彼を睨んでから、いかにも渋々と言いたげにゆっくり手を伸ばして彼の腕を掴んだ。
2人が歩き去ると、ギャラガとデルガドは堪えていたものを吹き出した。
「君の上官は素直じゃないな。」
「君の上官もだ。彼女のことが好きなくせに、今の状態から前へ行けない。だからドクトルにいつも遅れを取る。」
「彼女はどうなんだ?」
「どうだろ?」
ギャラガは苦笑した。
「多分、どっちも好きなんだ。だけど迷っているんじゃない、今の状態が彼女には心地良いんだと思う。 彼女は選びたくないんだ。」
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