アスルは僻地で遺跡発掘監視をする間、ずっと現地にいる訳ではないと言った。
「発掘許可を出す前後に誰かが現地へ行って、遺跡の近くに”通路”があるかないか確認する。何処か一番近い”出入り口”を探すんだ。一月以内の任務なら使用することはないが、長期の場合は時々報告や必要な物の追加調達の為にグラダ・シティに帰ることがある。グラダ・シティに通じていなければ、最寄りの町や村へ行く。ミーヤ遺跡は国境に近いから、国境警備の隊員が使う”通路”を利用出来る。」
彼は玄関のドアを開ける前に振り返った。
「分析結果は電話で構わない。」
「ちょっと待ってくれ・・・」
テオはテーブルから離れ、アスルのそばに行った。まだ何かあるのか、とアスルは己の用件が済んでいるので面倒臭そうな顔をした。
「君が今から使う”入り口”はこの家から近いのか?」
「マカレオ通りの下の方にあるガソリンスタンドの裏にある。」
「”出口”もその近所か?」
「スィ。」
アスルは時計を見た。遺跡の監視に戻りたいのだ。
「サスコシ族もその”入り口”や”出口”を見つけられるんだな?」
「ブーカ族ほどではないが、俺達オクターリャ族と同程度には見つけるだろう。もう帰って良いか?」
テオは急いで頭の中を探った。まだ何か要件が残っている筈だ。
「この家に君が住む件・・・」
アスルが黙って見返したので、彼は言った。
「やっぱり家賃はもらいたい。部屋代だけで良い、君の言い値で構わないから、払ってくれ。だから、この家にいつでも来てくれ。」
アスルはプイッと前へ向き直った。そして振り返らずに言った。
「考えておく。」
ドアを開けて出て行った。
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