ケツァル少佐はマカレオ通りの「筋」を南下し、途中で歩いている軍服姿の3人の若者を発見した。車を近づけて減速すると、向こうも気がついて立ち止まった。彼女が窓を開けると、3人は敬礼した。
「少佐、今お帰りですか?」
「スィ。」
少佐が目を見たので、ロホは”心話”で報告を行った。少佐が頷いた。
「アスルが使う”入り口”の近くにあなた方は出た訳ですね。」
「恐らくミーヤ遺跡とこの近辺の”空間通路”が繋がりやすくなっているのでしょう。新月が来ればまた変化すると思いますが。アスルが撃った女はグラダ・シティに逃げ帰ったものと思われます。残念ながら、既に24時間以上経っていますから、こちらへ来てから女の匂いも痕跡も発見しておりません。」
それを聞いてケツァル少佐は考え込んだ。それからふと顔を上げて、ロホに言った。
「これからあなたのアパートに3人は行くのですね?」
え? とデネロスが驚いた表情をした。
「追跡はもう終了ですか?」
「南部にいれば追跡続行ですが、あなた方はここへ帰って来ました。街中でアサルトライフルをぶっ放す訳にいかないでしょう。今夜はこれで撤収して休みなさい。明日は2時間の繰り下げ出勤を認めます。」
デネロスはまだ何か言いたそうだったが、ロホとギャラガが敬礼して承知を示したので、彼女も敬礼した。そして、少佐は「おやすみ」と言って、3人を残して走り去った。
ロホは2人の部下を見た。
「少佐の命令だ。今夜は私のアパートで休んで、明日はオフィスに出勤だぞ。」
デネロスは背中のリュックに着替えを入れておいて良かった、と思った。靴は泥だらけの軍靴のままだったが。
歩き出してから、ロホがギャラガに囁いた。
「少佐は何処から帰るところだったと思う?」
「サイスの家からですか?」
「サイスの家はあっちの方角だ。」
ロホはベンツが来た方角と反対の方を指した。
「ええっと、それじゃ、今僕達が向かっている方向から来られたと言うことは・・・」
「ドクトルの家からだろう。」
ギャラガはコメントを避けた。そして心の中で、ステファン大尉がまたヤキモチを焼くだろうな、と思った。
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