大統領警護隊はダラダラと朝食を取ったりしない。普通は。しかし、その朝は食事開始の合図を少佐が出すことはなく、テーブルに着いた人から順番に好き勝手に食べた。少佐は豆と果物だけ食べていたし、ロホはひたすら豆を愛していた。アスルの手料理をテオとデネロスとステファンは堪能したが、アスル本人は好きな物だけ選り分けて食べた。
「今日の軍事訓練は何をするんですか?」
とデネロスがサラダをモリモリ食べながら質問した。少佐はパイナップルを齧りながら考えた。そして逆に問い返した。
「貴女は何をしたいですか?」
うーんとデネロスが考えこんだ。やりたいことは沢山ある。それが軍事訓練になるかな?と考えているのだ。過去に行ったのは、ボーリング(球を気でコントロールする)、デネロス農園の手伝い(体力作り)、隠れんぼ、鬼ごっこ、サイクリング、海水浴、ロッククライミング・・・。彼女はチラリとテオを見た。そして答えた。
「鬼ごっこ!」
彼女と少佐の目が合った。 テオは彼女達が”心話”を使ったことに気がついた。デネロスは、どんな鬼ごっこを希望しているのかを伝えたのだ。うーん、と少佐が唸った。
ステファンがフォークを置いた。
「ご馳走様でした。無事に夜を過ごして、皆さん、羽目も外しませんでしたから、私はこれで引き揚げます。」
「え? もう帰っちゃうの?」
デネロスがガッカリした声を出した。少佐が言った。
「彼は任務でここにいたのですよ。」
「でも・・・」
テオはふと不謹慎な軍事訓練を思いついたので、口に出した。
「カルロを捕虜にして遊撃班に取り返しに来させるとか?」
一同が彼を見た。駄目だよね、とテオが笑いかけると、彼等は次にステファンを見た。ステファンが「え?」と言う顔をした。
「駄目です。」
と彼が言った。少佐が微笑んだ。テオは提案した本人であるにも関わらず、呟いた。
「本気か?」
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