「左遷部署って?」
アンドレ・ギャラガと2人だけになった時、テオはそっと訊いてみた。ギャラガはビリヤードに興じている上官達を見ながら「噂話です」と断った。
「さっきのケツァル少佐のお話でもお分かりの様に、太平洋警備室は本部から忘れられたかの様な存在の部署なのです。指揮官以外の隊員は地元出身の人が多いのですが、出世コースから外れた人ばかりが選ばれて送り込まれると言う噂があります。滅多に交代の話を聞かないし、向こうに着任してそれっきり戻らない隊員もいるとか。尤も・・・」
ギャラガは肩をすくめた。
「出身地に配属されて、そのまま住み着いてしまっても不思議じゃないでしょう。本部の上官達だって、グラダ・シティで家庭を持ってそのまま故郷に戻らずに住んでいる人が殆どなんですから。」
「確かに。」
テオは納得した。
「太平洋警備室に配属された隊員が、本部で何かしくじったとか、偉いさんの機嫌を損ねたって訳じゃないだろう。」
「そこまで事情は知りません。」
ギャラガは上官や先輩がビリヤード台で遊んでいるのを眺めた。
「ただ、少佐や大尉達がオルガ・グランデに行かれても太平洋警備室に立ち寄られたと言う話は聞いたことがありません。ほら、貴方と私が初めてお会いしたのもオルガ・グランデの陸軍基地だったでしょう? あの時もキロス中佐や部下達の話は出ませんでした。」
「そう言えばそうだったな。」
「だから忘れられた部署なんです。」
ギャラガの口調からは、そんな部署に飛ばされたくない、と言う響きが微かに聞き取れた。彼にしてみれば、西海岸へ行かされるくらいなら警備班に出戻った方がましなのだろう。
「それじゃ太平洋警備室の隊員達は遺跡や呪い関連には全くノータッチなんだな。」
「恐らく・・・」
その時、ロホが彼等を呼んだ。
「テオ、あちらの台が空きましたよ! アンドレ、しっかり練習しろよ!」
テオとギャラガはキューを選びに壁の棚へ行った。
「ナインボールで良いかい? 俺はまだそれしか知らないんだ。」
「結構です。私もまだ初心者ですから。」
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