「先刻のセニョール・ミラネスは、貴方の”目”か”耳”ですね?」
とケツァル少佐が尋ねた。ケサダ教授は微笑を浮かべたが肯定も否定もしなかった。彼は着替えた繋ぎを入れたらしいリュックサックを肩にかけ、テオと少佐を眺めた。
「まさか、遺跡を見学に来たと言う訳ではないですね?」
少佐が傷ついたふりをした。
「私はこれでも考古学を学んだ人間ですよ、教授。新発見の遺跡の近くへ来たら、見たくなるのは当たり前でしょう。」
テオも頷いて見せた。
「俺が見に行こうって彼女を誘ったんです。」
「だが、オルガ・グランデに来た本当の目的は別でしょう。」
ケサダ教授が歩き出したので、2人は付いて行った。薄暗い教会から外に出ると陽光が眩しかった。少佐が大股で歩く彼の横に並び、早口で言った。
「昨日、陸軍病院でピューマと出会しました。」
「そうですか。」
教授は動じなかった。無関係だと言いたげに歩き続けた。少佐が珍しく彼に揺さぶりをかけようとした。
「彼は仕事をしくじった様です。大統領警護隊内部調査班と鉢合わせして、一悶着あった様です。」
「内部調査班?」
教授が歩調を全く崩さずに彼女を振り返った。
「大統領警護隊の内部で何か失態がありましたか?」
テオは普段通りのケサダ教授のポーカーフェースに少し苛っときた。
「大罪人に尋問しようとして、彼は失敗したんですよ。そこに内部調査班が来た。」
「大罪人とは、穏やかではないですね。」
「ええ、大統領警護隊は絶対に真相を外部に知られたくないでしょう。」
「でもピューマの耳に入っています。彼はどれほどの大罪なのか、理解しているでしょうか。」
不意に教授が立ち止まったので、少佐とテオは勢いで数歩前に進んでしまった。振り返ると、教授が尋ねた。
「あなた方は私に何を求めているのです?」
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