次の店に行こうと、バルを出たら、そこにマハルダ・デネロス少尉とファビオ・キロス中尉が立っていたので、一同は驚いた。テオはキロス中尉に数回会ったことがあったが、いずれも中尉は軍務中で軍服姿しか見たことがなかった。だから普通に明るいチェック柄のシャツを着てコットンパンツと上等のスニーカーを履いているキロスを見て、びっくりした。
こいつ、結構女にモテるんじゃないか?
そんな感想を抱いてしまう程、ファビオ・キロスは溌剌とした良い若者ぶりだった。
文化保護担当部とテオの驚きを他に、中尉は上官であるケツァル少佐と大尉のロホに敬礼した。そして同じ中尉であるアスルと下位のギャラガ少尉には頷いて見せた。
テオは素早く視線を走らせ、デネロスと彼が手を繋いでいなければ腕も組んでいないことを確認した。デネロス少尉は仕事の時の服装をちょっとお洒落に着崩しているだけだ。それにアクセサリーを少しだけ加えて。
「こんな所で何をしているのです?」
と少佐が尋ねた。キロス中尉が微かに頬を赤くして答えた。
「デネロス少尉と交際することをお許し願います。」
少佐がぷっと噴き出した。
「私の許可なぞ要りませんよ。本部も私生活まで口出ししません。」
「しかし、けじめをつけておかないと・・・」
堅物は外務省のシーロ・ロペス少佐だけではないようだ、とテオは心の中で思った。少佐が優しく言い聞かせた。
「貴方が許可を得るのは、デネロス家の人々からでしょう。私は少尉の上官ですが、少尉の個人的生活に口を出しません。」
すると、マハルダ・デネロスが笑って言った。
「私も必要ないと言ったのですが、中尉は礼儀を守りたいと・・・つまり、私の親に会う前の練習です。」
アスルがちょっと冷ややかな目でキロス中尉を見た。
「女性の親に会うってことは、その先のことも考えているってことだぞ、キロス中尉。」
「勿論・・・」
キロス中尉はすっかり赤くなっていた。
テオは堅苦しい男の緊張をほぐしてやりたくなった。それに店前で大統領警護隊が集団で立ち話をしていると、店に迷惑だ。彼は提案した。
「キロス中尉が俺達の仲間に入りたいって言うんだから、これから一緒に次の店に行こうぜ!」
えっ!? とキロス中尉が振り返った。しかしロホが既に彼の肩に手を置いていた。
「一緒に行こう、ファビオ。休暇の間に何度か私達と出会うことになる。今夜はその始まりの儀式だ。」
テオはデネロスが喜んで少佐とハグしあうのを見た。
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