「アンドレ・ギャラガ少尉!」
不意に女性の声に呼ばれて、ギャラガは驚いて声がした方へ顔を向けた。アスルも振り返った。女性の士官が入り口に立っていた。日焼けした彼女の顔を見て、ギャラガは顔を綻ばせた。
「ブリサ・フレータ少尉!」
敬礼を交わす2人の少尉を見て、アスルが尋ねた。
「知り合いか?」
すると先刻まで話をしていた警備兵が説明した。
「隣国の超能力者騒動の時に、ギャラガ少尉がここへ来た。遺伝子学者の白人と大学生と3人だったかな。」
アスルはその事件に直接関わらなかったので、話には聞いていたが関係者がどの範囲なのか知らなかった。それにフレータ少尉が太平洋警備室からミーヤ国境検問所へ異動になった件も知ってはいたが、あまり記憶に留めていなかった。本部の隊員のほとんどを知っていると自負している彼は、外の組織に勤務している隊員の知識が乏しいことを自覚した。
フレータ少尉は休憩中の隊員に昼食の準備が出来たことを知らせて、それからギャラガとアスルに改めて向き合った。
「こちらへは、遺跡関係の密輸摘発か何かで?」
「ノ、もっと悪質だ。」
アスルは彼女の上官の顔を立てて、この場では説明しなかった。
「恐らく隊長から後で説明があると思う。」
と警備兵を見て言った。警備兵が頷き、
「隊長に報告してから、食事に行く。」
と言い、部屋から出て行った。
フレータ少尉が客を見た。
「あなた方もお食事されますか?」
料理に興味があるアスルは、大きく頷いた。
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