憲兵と名前を交換し合ってから、アスルとギャラガは国境検問所へ行った。カフェから徒歩で行ける距離だ。当番の警備兵達は忙しいだろうから、休憩中の兵士がいる裏の事務所へ行った。首都かジャングルの遺跡にいる筈の文化保護担当部がやって来たので、休憩中の大統領警護隊の隊員は訝しげに応対した。敬礼を交わしてから、アスルは応対した隊員に密猟者の情報を”心話”で与えた。
「密猟は隣国でも問題になっている。」
と警備兵は言った。
「検問で通せない品だから、恐らく海に出て運んでいるだろう。憲兵隊から沿岸警備隊に手配書を回してもらおう。」
「殺人犯だ。」
「一族の者を殺害するなんて、質が悪い。」
警備兵は検問ゲイトの方をチラリと見た。
「だが、その被害者は何故ナワルを使ったと思うんだ?」
「服を焼いた跡がなかったからな。死体をわざわざ裸にして焼くなんて、密猟者はやらないだろう。身元隠しなど、森の奥では意味がない。」
「そうだな・・・」
警備兵は片手を顎に当てた。
「ことによると大事かも知れないぞ。ナワルの状態で殺されたら、人間に戻ってしまうところを目撃される。」
「十分その恐れはある。だから”砂の民”が動いている。」
警備兵が溜め息をついた。
「あの連中は秘密裏に動くから、全て片付いても、我々にはわからない。我々はいつまでも犯人を探すことになる。」
「それに見せしめにならない。」
アスルは国境警備班が自分達と同じ意見であることに安心した。
「隊長と相談して、この近辺の一族に警戒を促そう。」
「しかし、ピューマにも知られるぞ。」
「知られても構わんさ。」
と警備兵は言った。
「逆に連中は動きにくくなる。」
先輩達の会話を聞いていたギャラガは思った。
ーー密猟者は”ヴェルデ・シエロ”全体を敵に回したな・・・
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