焚き火を囲んでの夕食はアスルお手製の鶏肉スープ、デネロス制作のポテトサラダだった。力仕事をした後だったのでケツァル少佐は遠慮なしにモリモリ食べた。テオもアスルのスープは大好物だったが、初めて同席するキロス中尉がどれだけ食べるのかわからなかったので、少しセイブした。ロホが別行動で行った国境の街ミーヤで仕入れてきた豆の缶詰を開け、各自のポテトサラダの上に少しずつ分けてくれた。
「噂に違わず、美味い。」
とキロス中尉がアスルのスープを誉めた。
「警備班時代に君と同期だった連中から聞いていた。」
「警備班時代は料理する暇なぞなかったぞ。」
とアスル。キロスがおべっかを言ったと言わんばかりに素気ない。キロス中尉は彼の敵意に気付かぬふりをした。
「野外訓練の時に君が飯当番をした話だ。手に入る少ない材料で美味い飯を作ったと聞いた。」
「それよりデルガド少尉やステファン大尉からの情報の方が新しいでしょう。」
とギャラガ少尉が2人の中尉の確執に鈍感なふりをして割り込んだ。
「デルガド少尉は休みを取る度にアスル先輩の家へ泊まりに来るから。」
え?っと驚いたのはキロス中尉でなくテオの方だった。
「エミリオはそんなに頻繁にあの長屋へ来るのか?」
「スィ、図書館へ行ったり買い物をして、先輩の家で寝泊まりされてますよ。」
「無料で泊まれるからだ。」
とアスルがムスッとした表情で言った。
「俺が監視業務で家を空けていても平気で入り込んでいる。」
テオは思わず笑った。デルガドに好きな時に来いと行ったのはテオだった。ケツァル少佐も笑った。
「それでは、いつまで経ってもアスルは女友達を家に呼べませんね。」
「そんな友達はいません。」
アスルはすっかりむくれてしまい、鍋をおたまでかき回した。
「お代わりが欲しい人はいるか? いなけりゃ、俺が全部食うぞ。」
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