2024/01/05

第10部  穢れの森     11

 携行食は例外として、ジャングルで食べ物を残すのは御法度だ。匂いで動物が来るし、高温多湿の気候で残飯の腐敗が始まる速度が早い。全員でスープとポテトサラダを綺麗に完食した。ギャラガ少尉とテオは食器と鍋を井戸で洗った。料理をしたアスルは余った食材を土に埋めてしまい、 明日はグラダ・シティに帰還することを行動で示した。
 ロホの地図にケツァル少佐とキロス中尉がそれぞれ発見があった箇所を記した。イスマエル・コロンの骨が発見された場所、焼け焦げた遺骸を見つけた場所、何者かの残留物が見つかった場所、等だ。

「現場を発掘して調査しなければなりませんが、穴を掘って殺害した人間を入れ、焼いたと思われます。」

 少佐が考えを述べた。

「地面の臭いから、まだあまり長い時間は経っていないとわかります。恐らくこの一月か2ヶ月の間に犯罪が行われたのでしょう。」
「殺害されたのはオラシオ・サバンと考えて良さそうです。」

とロホが囁いた。

「犯人は殺人を知られないよう、遺体を地面の穴に入れて焼いたのでしょう。慎重に隠したつもりでしたが、サバンを探しに来たコロンが何らかの理由で犯罪を嗅ぎつけた。運悪く犯人がそばにいて、彼も殺害されてしまった。」
「何故犯人はコロンを焼かなかったのです?」

とキロス中尉。ロホは少し考えてから考えを述べた。

「その時犯人は穴を掘る道具を持っていなかった。死体を焼く燃料がなかった。或いは死体を埋める時間がなかった。」

 少佐が言った。

「サバンとコロンがそれぞれ単独で森に入ったのか、調べましょう。サバンは普段から単独行動をしていたそうですから、彼と接触した人間を探しのは難しいでしょうが、コロンは”ティエラ”でした。誰か同行した人間がいた筈です。」
「そいつが犯人の可能性があるのですね?」
「私達は警察ではありません。犯人探しは憲兵隊の仕事です。それに今回の軍事訓練は、サバンの捜索が目的でした。これからテオに遺骸の検査をしてもらい、誰が亡くなっていたのか調べてもらいます。」

 少佐は夜のジャングルを見た。

「何者か知りませんが、一族の者を殺害し、侮辱した人間は許せません。」


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