2024/03/28

第10部  罪人        6

 ーー馬鹿なことを言うな!

とアスルが電話の向こうで怒鳴った。大きな声で能力の話が出来るのだから、どこか誰もいない場所にいるのだ。

ーー会ったこともない人間の過去へ跳ぶなんて俺はやらない。第一、そいつがいつどこにいたのかわからないんだろ? そんなの、エネルギーの無駄だ。

 言われてみればその通りで、電話をかけたテオもそばで聞き耳を立てていたギャラガもしょんぼりした。

「殺された男と手配書の男が同一人物なのか判明させるだけなんだがなぁ・・・」

 テオが思わず呟くと、スマートフォンの中のアスルが意地悪い表情で提案した。

ーーそれなら、復顔すりゃいいだろ?
「復顔?」

 テオが繰り返すと、ギャラガの方はゲゲっと声を出した。

「死体の肉を溶かして骨だけにして粘土で肉付けしていく、あの方法ですか?」

 テオもドラマで見たことがあった。既に骨になっているのであれば、それも可能だが、まだ死んだばかりで肉がついている人間の頭部を骨にするのはどうも・・・と思っていると、アスルがテオより科学者らしい意見を口にした。

ーー死体のD N Aか顔写真からC Gで顔を二次元再生したらどうだ? あんたならその程度の技術は使えるだろう?
「ああ!」

 テオは理解した。ギャラガはまだポカンとしている。

「やってみる。貴重な提案を有り難う、アスル!」

 アスルはフンと言って先に電話を切った。
 テオはギャラガを振り返った。

「死体の写真を撮影しに行くよ。どこにあるんだい?」




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第11部  紅い水晶     8

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