夕刻、定時で役所が閉まる10分前に大統領警護隊文化保護担当部の隊員達はオフィスに戻った。
椅子に座るなり、ケツァル少佐が命じた。
「報告!」
最初にロホが片手を挙げ、言った。
「トーレスの家の中を捜索しましたが、怪しい品は何も出ませんでした。」
これだけ聞いたら、隣の文化財遺跡担当課の職員達は、盗掘品の捜査だと思うだろう。ロホは上官の目を見て、”心話”で追加した。
ーー今夜に父に会って訊いてみます。
少佐は頷き、次にギャラガ少尉を見た。ギャラガは肩をすくめた。
「例の救急隊員は臨時雇用のパートで、交通事故の怪我人を搬送した後、車を降りて姿を消しました。今夜、彼が盗品を持ち込みそうな故買屋を探してみます。」
そして彼も”心話”で追加した。
ーー彼の同僚達は石を持っていませんでした。彼が救急隊に提出した住所はスラム街のもので、確実ではないので、そこも捜索します。
ーーご苦労。スラムは私が探してみます。貴方は故買屋をお願い。
ーー承知しました。
アスルとデネロス少尉は遺跡に出ているので不在だ。少佐は業務終了を宣言して、彼等は解散した。
階段を降りながら、少佐はパートナーのテオにメールを送った。
ーー厄介な仕事が発生したので、今夜は帰れません。
車に乗り込む頃にテオからメールが返信された。
ーーわかった。カーラに残りの飯を持って帰らせて良いか?
ーーO K!
まだ本当に禍々しい物なのか否か不明の石を探して、大統領警護隊文化保護担当部は夜のグラダ・シティへ散った。
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