2024/05/28

第11部  紅い水晶     27

  夕刻、定時で役所が閉まる10分前に大統領警護隊文化保護担当部の隊員達はオフィスに戻った。
 椅子に座るなり、ケツァル少佐が命じた。

「報告!」

 最初にロホが片手を挙げ、言った。

「トーレスの家の中を捜索しましたが、怪しい品は何も出ませんでした。」

 これだけ聞いたら、隣の文化財遺跡担当課の職員達は、盗掘品の捜査だと思うだろう。ロホは上官の目を見て、”心話”で追加した。

ーー今夜に父に会って訊いてみます。

 少佐は頷き、次にギャラガ少尉を見た。ギャラガは肩をすくめた。

「例の救急隊員は臨時雇用のパートで、交通事故の怪我人を搬送した後、車を降りて姿を消しました。今夜、彼が盗品を持ち込みそうな故買屋を探してみます。」

 そして彼も”心話”で追加した。

ーー彼の同僚達は石を持っていませんでした。彼が救急隊に提出した住所はスラム街のもので、確実ではないので、そこも捜索します。
ーーご苦労。スラムは私が探してみます。貴方は故買屋をお願い。
ーー承知しました。

 アスルとデネロス少尉は遺跡に出ているので不在だ。少佐は業務終了を宣言して、彼等は解散した。
 階段を降りながら、少佐はパートナーのテオにメールを送った。

ーー厄介な仕事が発生したので、今夜は帰れません。

 車に乗り込む頃にテオからメールが返信された。

ーーわかった。カーラに残りの飯を持って帰らせて良いか?
ーーO K!

 まだ本当に禍々しい物なのか否か不明の石を探して、大統領警護隊文化保護担当部は夜のグラダ・シティへ散った。


0 件のコメント:

第11部  神殿        9

  暫くテオはママコナが去った方向を見つめて立っていた。伝説の大巫女様と言葉を交わしたことが、まだ信じられなかった。彼女はスペイン語を話したのだ! しかもインターネットで世間のことを知っていると言った! 彼女がテレパシーで”ヴェルデ・シエロ”に話しかける言葉は、人語ではなくジャガ...