グラダ・シティ市立植物園はグラダ大学から”曙のピラミッド”を挟んだ反対側にあった。植物園の隣は動物園で、自然史博物館もある。国立植物園や動物園はないので、事実上ここがセルバ共和国の一番大きな自然科学の標本展示場所となるわけだ。セルバ共和国の義務教育を受けている最中の子供(たまに成人もいるが)は学生証を出すと入園料は無料だ。公務員も半額で、大学の職員ともなると、子供と同じ扱いで無料となった。因みに・・・
「大統領警護隊は無料なのかい?」
とテオは受付カウンターで入場券を販売している人に訊いてみた。
「スィ、パハロス・ヴェルデスと軍人さんは無料です。」
と受付の人は答えた。丸い目をした若い男性で、平日だったので、ちょっと退屈している様子だったので、テオはもう少し質問してみることにした。
「最近、公務員とか大統領警護隊の隊員が来たことはなかったかい?」
「日曜日に家族で来る人はいますよ。」
「神殿の人は?」
「神殿の人?」
受付係は目をパチクリさせた。
「神殿の人って、巫女や神官のこと?」
「彼等は来ないだろうけど・・・」
テオはちょっと言葉を変えた。
「巫女や神官の世話をしている人とか・・・あの人達も公務員だろ?」
そうだろうか? テオはあの秘密の神殿で働く人々の社会的身分は公式にはどうなっているのだろう?と疑問に思った。
市民がどれほどピラミッドの地下の神殿のことを知っているのか知らないが、受付係は無邪気に笑った。
「あの人達は大統領府の職員ですよ。公務員だから、半額ですね。」
表向きはそう言う身分なのか。 テオは不審な入場者を割り出すのは無理だな、と思った。
「植物園の植物の花とか葉っぱを持ち帰る人はいる?」
「研究に必要なら、申請すればいつでも可能です。 ここに用紙があります。」
受付係はテオがグラダ大学の准教授なので、気前良く言った。申請用紙を出してカウンターに置いた。それでテオはカロライナジャスミンの葉を希望と記入した。
「最近、これを欲しいと言った人、いたかな?」
受付係はテオの記入内容を見てから、首を振った。
「ここ暫くは園内の植物を持ち出した人はいません。」
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