2024/09/06

第11部  石の目的      27

  その夜、テオとケツァル少佐が彼等のコンドミニアムで夕食を取っていると、少佐の電話にステファン大尉が電話をかけて来た。最近遊撃班の副指揮官の仕事が忙しいのか、姉にも文化保護担当部の友人達にもずっと沙汰無しだったので、少佐はちょっと驚いて、画面に表示された大尉の名前をテオにちらりと見せた。普段はそんなことをしないので、テオも大尉が久しぶりに電話をかけて来たことを意外に思った。
 少佐は電話に出て、ちょっと弟の言葉を聞いていたが、やがて短く命令口調で言った。

「こちらへ来なさい。出て来られないのでしたら、明日、こちらからそっちへ行きます。」

 大尉が何か言い、少佐は「了解」と答えて、通話を終えた。そしてテオを見た。

「カルロがこれからここへ来ます。何か相談したいことがあるようです。」
「俺は向こうへ行っていようか。」

 テオが気を利かせて言うと、彼女は首を振った。

「ここにいてください。貴方に言えないことなら、私は彼の相談に乗りたくありません。碌なものじゃないでしょうから。」

 本部を出て相談に来るのだから、きっとややこしい碌な案件じゃないだろう、とテオは思った。
 カーラは帰った後だったので、テオと少佐は手分けして食卓を片付けた。食器を片付けてコーヒーを淹れたところへ、ドアチャイムが鳴った。少佐がインターフォンに言った。

「入って来なさい。」

 ステファン大尉はコンドミニアムの正面フロアの解錠番号を知っているので、既に2人が住んでいる最上階に上がって来ていた。ドアが開いて、大尉が入って来た。上半身は私服のTシャツで下は迷彩柄のパンツだ。テオがいるのを見て、少し躊躇ったが、テーブルの上に3人分のコーヒーが用意されているのを見て、決心したように室内に入った。

「こんばんは。突然お邪魔して申し訳ありません。」

 少佐は無駄な挨拶をしなかった。

「用件は?」

 ステファン大尉は空いた席に座った。

「部下が神官から奇妙な命令を受けまして、困って私に相談に来ました。」

 相談の相談か・・・テオは黙って大尉の顔を見つめた。少佐も黙って大尉が話を続けるのを待った。ステファン大尉はどこから話そうかとちょっと躊躇してから、語り出した。

「遊撃班に私以外に一人、ミックスの隊員がいます。8分の1アケチャ族のルーク・アイオラ少尉と言うブーカの若者です。能力的には純血種と変わらない優秀な男です。そのルークが2週間前に神殿に一人だけ召喚されました。セプルベダ少佐を通してですが、少佐は何故彼だけが神殿に呼ばれたのか理由をご存知ありません。ですから、ルークが何か神殿を冒涜するような粗相でもしたのかと心配されました。」


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第11部  石の目的      29

 「遠い祖先にグラダがいるかどうかなんて、D N A分析でもしなけりゃ、わからないだろう。」 とテオは断じた。 「それに純血種のブーカと名乗っていても、実際はグラダの因子を持っていたかも知れない。」  ケツァル少佐がステファン大尉に尋ねた。 「アイオラ少尉はグラダの子孫を見分ける...