「サカリアスは今来客中だ。」
とテイサ・マレンカは言い、ロホとテオを家の中に案内した。大きな横長の居間が左右に広がり、しかし右側は少し入ったところで板で仕切られていた。出入り口に簾が掛かっていた。
テイサは客と弟を左側の広い空間に案内し、そこで待つように言うと、右側の簾の向こうに姿を消した。
テオは居間を見回した。ウッドデッキに近い空間がリビングで、敷物や椅子が置かれていた。テレビもあった。 背後の空間は裏口があって、どうやら台所へ繋がっているらしい。戸口周辺に鍋や食器の棚が設てあった。
ロホはテオに好きな場所に座るようにと勧め、己は台所の方へ去った。テオは蔓草で作った椅子に座った。使い込まれて少し中央の座面が窪んでいたが、お尻にフィットした。簾のカーテンの隙間から庭がよく見えた。鶏が遊んでいる。
ロホが瓶入りのコーラを2本持って戻って来た。もう片方の手にはグラスが2個。テオは瓶とグラスをそれぞれ受け取り、ロホの真似をして近くのテーブルの角で栓を開けた。
「随分大きな家だが、家族は何人だい?」
と質問すると、ロホは肩をすくめた。
「祖母、両親、長兄のサカリアスと彼の妻子、次兄のウイノカの妻、テイサと彼の妻子、私の弟2人、それに母の兄弟が2人、あの人達は独身です。ええっと・・・大人だけで10人です、子供は数えたことがない・・・」
「君の甥姪だろ?」
「 スィ。でも私は入隊してから一緒に住んでいないので、子守をしたことはないし、あまり一緒にいた時間がありません。それに、我々は母親の兄弟の方を重視するので、兄嫁達の兄弟が子供達の面倒を見ています。」
マレンカ家は女の子供がいないのだ。だから女の孫がいても父親の兄弟達は面倒を見ない。伯父叔父が子供好きなら話は別なのだろうが。
テオはもう一つ気になった。
「ウイノカと言う兄さんは、奥さんだけここに残して、どこにいるんだ?」
「ウイノカは・・・」
ロホはそっと左の棟に目を遣った。
「神殿で働いています。滅多に帰って来ない。私は何故彼が結婚したのか理解出来ません。ウイノカの奥さんは寂しくないのか、疑問ですよ。」
ロホの常識はテオの常識だった。
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