風通しの良い横長のリビングで、テオ、ロホ、サカリアス、テイサの4人はそれぞれ適当に近くにあった椅子に座って扇型になった。上座は特に決まっていないようだが、サカリアスが最初に場所を決めると、2人の弟達が彼の顔が見える位置に椅子を置いたので、テオもロホの隣に椅子を置いたら、サカリアスと向かい合う形になってしまった。サカリアスがロホに言った。
「質問しなさい。」
ロホが頷き、単刀直入にではなく、ちょっと遠回しに尋ねた。
「最近ウイノカから神殿のことを何かお聞きになりましたか?」
サカリアスは直ぐに答えずにテイサを見た。テイサが答えた。
「ウイノカはこの半年帰っていない。」
では、奥さんは半年も夫に会っていないのか、とテオはこの場でどうでも良いことを思った。ロホが粘った。
「家の外で彼に会いませんでしたか?」
「私は会っていない。」
とテイサが言い、サカリアスを見た。サカリアスがロホに質問を返した。
「ウイノカが神殿のことを私達に喋ると思うか?」
「ノ。」
とロホはあっさり否定した。
「神殿での出来事を話す人でないことは承知しています。ですが、何か問題が生じて相談に来たことはありませんでしたか?」
「相談か・・・」
テオは、テイサが怪訝な表情をしたのにサカリアスは無表情でロホを見返したことに気がついた。兄弟が一瞬視線を合わせた。 ”心話”だ、とテオは悟った。そして、その「一瞬」は予想外に長かった。5秒ほどかかって、やっと2人は互いの目を逸らせた。するとテイサが兄に声をかけた。
「私は席を外した方が良さそうですね。」
弟が軍務でやって来たことを思い出し、国家機密に関係しているのだと察した様だった。サカリアスが無言で手を振って、「行け」と合図した。テイサは立ち上がり、客人であるテオにだけ頭を下げて、左の家族の場所へと姿を消した。
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