2024/12/22

第11部  太古の血族       27

  エダの神殿は、グラダ・シティから北西へ行った場所にあり、アスクラカンとグラダ・シティ、エダを線で結ぶとほぼ正三角形を形作った。北部の乾燥地帯に近いので、森の樹木は低く細い。住民は海に近い地帯に住んでいるので、少し内陸になるエダは耕地にもならず昔から手付かずの自然が残されていた。セルバ人にとっては「禁足地」の一つで、狩猟で入ることも許されない場所だ。その痩せた森の中に背の低いピラミッド状の石組が隠れるように建っていた。周囲には平屋の石の家屋が互いに少し距離を空けて取り囲んでいた。
 マハルダ・デネロス少尉は初めてエダに足を踏み入れた。森の中に入ると空気が張り詰めた感触で、肌にチクチクするような気分を味わった。

「なんだか不快なんですけどぉ・・・」

と彼女は少し先を行く上官に感想を述べた。

「ミックスの私はここへ入っちゃいけないんでしょうか?」

 ケツァル少佐が振り返った。

「そんなことはありません。私も少し気分が沈んでいます。ここの空気が神官達の気分を反映しているのでしょう。」
「では、神官達が何か問題を抱えていると言うことですか?」
「そのようですね。」

 森の地面には、よく見ないとわからない石畳の道が付けられており、2人はそこを歩いていた。苔で軍靴の底が滑りそうだ。
 突然、少佐が足を止め、片腕を横に伸ばして手のひらをデネロスに向けた。止まれと言う合図だ。デネロスは無言で従った。手にはアサルトライフルを持っている。聖域に武器を持ち込むのは喜ばれないことだが、少佐が持っているようにと言ったのだ。その少佐もライフルを装備していた。もし神官か誰かが苦情を言えば、屋外行動の基本装備だと主張する。
 デネロスは前方から微かな足音が近づいて来るのを聞き取った。 ”ヴェルデ・シエロ”でも軍人でなければ歩くときに物音を立てる。 ”ティエラ”の耳に聞き取れなくても、大統領警護隊なら聞き取れた。そんな程度の音だった。
 ケツァル少佐がライフルを前方に向けて、声を出した。

「止まれ! こちらは武装している。大統領警護隊だ。」

 音が止まった。ちょっと驚いたらしい呼吸が聞き取れ、やがて男性の声が聞こえた。

「こちらはエダの神殿の守り人だ。何故に大統領警護隊がここにいるのか?」

 少佐が答えた。

「貴方のお顔を見てからお答えしよう。」


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第11部  太古の血族       27

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