アスマ神官はサスコシ族だ。カエンシット神官とは親族関係だ。ケツァル少佐は彼の存在を忘れていた己の間抜けさに心の中で毒づいた。結界を張っていたのは3人だったのか?
アスマ神官は少佐を見て、小さな溜め息をついた。
「グラダ・シティで動きがありましたね、少佐?」
「スィ。あれは貴方の指図ですか?」
「ノ、私は首都で何が起きたか、知らされていません。ここにいる神官は全員エダの神殿の外でこの数日に起きたことを知りません。しかし、貴女がここに来たのは、神殿に関することで何かが起きたのでしょう?」
彼の言葉をどこまで信じて良いのか判断しかねているケツァル少佐の横で、キロス中尉が発言した。
「神官殿、我々にはグラダ・シティで起きていること、このエダの神殿で起きていること、何もわかりません。どうか我々にわかる言葉で教えて頂けないでしょうか?」
ケツァル少佐も頷いた。
「私からもお願いします。キロス中尉と私だけでなく、他の近衛兵達にも説明をお願いしたい。」
アスマ神官はカエンシット神官の顔を見た。しかし視線は合わせなかったので、”心話”で内緒話をした様子はなかった。
「今、我々が心配しているのは、他部族の神官がここから出て行くことです。結界を張りたいが、我々だけではこの建物を覆う範囲しか張れない。ブーカの近衛兵の力を貸していただければ、敷地全体をカバー出来ます。それから控の会所に移動して話しましょう。」
カエンシット神官の提案に、ケツァル少佐は言った。
「私一人で大丈夫です。他の神官達はこの建物内にいらっしゃるのですね?」
「この建物内のどこかにいます。」
カエンシット神官はちょっと苛っとした口調になった。
「意見が割れて、恥ずかしいことに、口論になったのです。その後、ブーカの神官の半分が”話し合いの間”から出て行った。我々は彼等をここから出したくないのです。だから結界を張りました。彼等を出したくない理由はこれから教えましょう。」
彼はちょっと頭を下げた。
「少佐、どうか結界をお願いします。 これは反逆罪に関わる事案です。」
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