大統領警護隊文化保護担当部の友人達がテオの部屋に泊まることになった。寝具の準備は必要ない。彼等はどんな場所でも眠れる訓練を受けているし、テオの部屋にはソファがあるし、彼等は頻繁に泊まっていくので、毛布やクッションはクローゼットに入っている。
銘々が好きな場所に寝場所を作っていると、テオの携帯に電話がかかって来た。画面を見ると、考古学のケサダ教授だったので、何の用だろうと思いつつ電話に出た。
「オーラ・・・アルストです。」
ケサダ教授の低い声が向こうで囁いた。
ーー博士がそちらへ行きます。
そして切れた。え? とテオは思わず電話を見つめた。博士とは、ファルゴ・デ・ムリリョ博士のことに違いない。あの白人嫌いの博士が俺のところへ?
困惑する彼の呼吸に気がついたアスルがそばに来た。
「良くない知らせか?」
テオは彼を見た。
「良いのか悪いのか、わからない。ムリリョ博士がこちらに来ると、ケサダ教授から前触れがあった。」
「え?」
ロホもギャラガも驚いてテオを振り返った。
「ムリリョ博士がここへ?」
「何の用事ですか?」
アスルが心配そうな表情になった。
「ドクトル、あんた、何か彼を怒らせるようなことをしたか?」
「ドクトルだけじゃないだろう。」
とロホが呟いた。
「私達全員で、大神官代理の病室に押しかけてしまった。そのメンバー全員がここにいるんだからな。」
「”砂の民”恐るに足らずです。」
とギャラガが不安を吹き飛ばそうと空元気で言った。
「ここにいるのは、ブーカとオクターリャ、そして不祥グラダです。マスケゴに負けませんよ。」
「博士が一人で来るとは限らないぞ。」
とテオは言ったが、”砂の民”が複数で粛清に乗り出した話は聞いたことがなかった。それに博士の性格なら、どんな問題も単独で対処するだろう。
「出来るだけ、平素の態度で迎えよう。」
「いや、不意打ちを食らったふりをしよう。」
とアスルが提案した。
「ケサダ教授が俺達に告げ口したとバレても気の毒だろう。」
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