「ママコナ様はどんな夢を見られたのです?」
ママコナは名前ではない。巫女と言う意味だ。セルバ共和国でママコナと言えば普通は”曙のピラミッド”に住まう大巫女のことを意味する。国民の誰も彼女の顔を見たことはないし声も聞いたことがないが、彼女が存在していることは周知の事実だった。彼女はセルバ共和国を大きな自然災害から守っている、そう言う信仰が古代から連綿と続いているのだった。だから、彼女が見る夢も、神官達は大真面目で解釈を試みる。
テオの質問に、ムリリョ博士は困った様な目をした。
「あの聖なる娘は、白いジャガーの夢を見たと言ったのだ。」
え? っとテオは思った。ロホもアスルもギャラガも動じた様子を見せなかったが、沈黙が驚きを表している、とテオは思った。
「その・・・白いジャガーの夢の意味は・・・?」
「大神官の代替わりだ。」
すると歴代の大神官代理が代わる度に、その前に巫女様は白いジャガーを夢に見ているのか。
テオは、”名を秘めた女の人”がケサダ教授と会ったことがないことを知っている。しかしママコナは全ての”ヴェルデ・シエロ”の本質を知っていると言われている。彼女がケサダ教授の家に息子が生まれたことを知らない訳はないだろう。半分グラダの男の子だ。純血種の”ヴェルデ・シエロ”だ。大神官になる資格を持つ子供だ。そして、現在の大神官代理は瀕死の病状にある。”名を秘めた女の人”は、ケサダ教授の息子を大神官候補にせよと夢でお告げをしたのだろうか。
しかしムリリョ博士は、孫のことを心配しているのでもなさそうだった。
「ロアン・マレンカは呪いで死の床に着いている。呪いを祓えば、彼は復調する・・・」
博士の視線がロホに向けられた。ロホがドキリとした表情になった。
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