「”名を秘めた女の人”は女性にばかり話しかけられ、我々神官を無視なさる・・・」
とアスマ神官が言ったので、女性達は驚いた。確かに、当代の大巫女にはその傾向がある。彼女はハニカミ屋で、男性と言葉を交わすことをあまり好まない。その代わりセルバ共和国内の純血種の”ヴェルデ・シエロ”女性にはどんどん話しかけてくる。本当はミックスの女性にも話しかけているのだが、ミックスの”ヴェルデ・シエロ”はママコナの心の声が理解出来ないのだ。
女性ばかりに大巫女が話しかけることに、今まで不満を言い立てた男性はいなかった。本当に必要ならば、彼女はちゃんと神官に肉声か侍女を通して言葉を伝えていたのだ。アスマ神官やカエンシット神官が大巫女から疎外されていると感じたのであれば、それは伝言役の侍女が彼等を避けていたとしか思えなかった。
「”名を秘めた女性”は大神官代理にお言葉を伝えていらっしゃったのでしょう。他の神官には彼から伝わると思われているだけなのでは? 貴方を除け者にしているのではないと思います。」
とデネロス少尉が臆することなく意見を述べた。近衛兵達が賛同するかの様に頷いた。
「彼女はまだ23歳か24歳です。男性と接することなく成長されました。直接男性と言葉を交わされるのは、もしかするとちょっと怖いのかも知れません。」
とカタリナ・アクサ少尉も呟いた。
「近衛兵が新しく着任する際に、”名を秘めた女の人”の謁見を受けます。私の時に、彼女は女性には微笑まれましたが、男性には緊張したお顔で挨拶されました。異性に慣れておられないのだと、私には感じられました。普段は数人の侍女だけを相手にお暮らしになられている方です。男性の体格を見て、怖いと感じられているのでしょう。」
ケツァル少佐が話を下に戻そうとした。
「アスマ神官殿、エダの神殿の中は、現在どの様な状況になっているのです? 貴方と同じ考えの方が、反対される方達と対立されて、暴力に訴えているのではないでしょうね?」
0 件のコメント:
コメントを投稿