「近衛兵の分際で神官に質問をするのか?」
とアスマ神官が低い声で囁いた。するとケツァル少佐が口を挟んだ。
「では、私が質問しましょう。声音で”操心”を使えないように。」
キロス中尉や少尉達がハッとした表情になった。彼女達は一瞬だが神官の声で我を失いかけていたのだ。
近衛兵の一人がカエンシット神官に後ろから目隠しの布を当てた。
「無礼者!」
と神官が怒鳴ったが、女性達は動じなかった。ケツァル少佐はアスマ神官の前にかがみ込み、彼の目を覗き込もうとした。アスマ神官は心を奪われるのを防ごうと目を閉じた。
「目を見なくても、私は”操心”を使えますよ。」
と少佐が脅かした。
その時、ナカイ少尉がビクッと体を震わせた。キロス中尉とデネロス少尉がそれに気がついて彼女に顔を向けた。
「どうしました?」
とデネロスが尋ねると、ナカイ少尉は頬を微かに赤くさせて答えた。
「”名を秘めた女性”が私に命じられました。『殺さずに連れて帰れ』と・・・。」
ああ、とセデス少尉がその意味を察した。
「大神官代理に呪いをかけたのは、このお2人のどちらかですね? 呪いを解くにはかけた本人が必要です。」
「我々は同胞を殺しません。正当防衛でない限り・・・」
カタリナ・アクサ少尉がカエンシット神官の手を後ろでに革紐で拘束しながら言った。マリア・アクサ少尉もアスマ神官の手を縛った。
「操られるのがお嫌でしたら、正直にお話しください。」
とケツァル少佐は2人の神官に言った。
「世襲制をお考えになったことは罪でもなんでもありません。他の人間に呪いをかけたこと、罪がない”ティエラ”に毒を盛ったこと、エダの神殿内で他の神官を閉じ込めたことは長老会の審議対象になるでしょう。」
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