テオが彼自身の寝室に入ってすぐに電話に着信があった。見るとケツァル少佐からだった。
ーー1人ですか?
「ノ、ロホ、アスル、それにアンドレがリビングにいる。」
ーーでは、1分後に行きます。
テオは急いで寝室を出てリビングに向かった。そこでは大統領警護隊の男性隊員達が寝る体制に入っていた。アスルがソファに横になり、その側の床にシュラフに入ったギャラガ、ロホはクロゼットから引き出したマットレスを床に広げたところだった。
そこへ、いきなり空中からケツァル少佐、デネロス少尉、そして男達が知らない女性兵士が3名湧いて出た。
「ワッ!」
とアスルが、彼らしからぬ叫び声を上げて跳ね起きた。ギャラガはシュラフからすぐに出られなくて、転がって物陰に身を隠した。ロホは荷物の横に置いた拳銃に手を伸ばし、そこで固まった。
「少佐・・・」
テオは己の胸に落ち着け、と声をかけた。少佐とデネロスの後に続いた女性兵士は野戦用の服装だが、持ち物は大統領警護隊のリュック、ライフル、それに槍・・・槍だって?
床の上に転がり出た女性達は素早く立ち上がった。少佐が先導者らしく、仲間に欠落がないか名前を呼んだ。
「デネロス!」
「スィ!」
「ナカイ!」
「スィ!」
「セデス!」
「スィ!」
「マリア・アクサ!」
「スィ!」
「よし、全員いますね。」
ケツァル少佐は頷いてから、テオに向き直った。
「エダの神殿から戻って来ました。初顔合わせだと思いますが、3人の少尉は神殿近衛兵です。」
「神殿近衛兵に女性がいるのか?」
と思わず尋ねてから、テオは偏見で役職を見ていたな、と気がついた。
「事情は説明してもらえるのかな?」
少佐はロホ達を見てから、デネロスを振り返った。
「マハルダ、3人の神殿近衛兵をあちらの部屋へ案内しなさい。向こうで一晩休みましょう。」
テオはすかさず声をかけた。
「夕食の残りがあるから、食ってもいいぞ。俺達の朝飯のことは心配しなくて良い。」
デネロスがニッコリ笑って、グラシャス、と言うと、少佐にもグラシャス、と言って3人の新しい仲間を率いてテオの区画を出て行った。近衛兵達はロホ達には挨拶もしなかった。ロホ達もそれを不満に思う様子はなかった。部署が違うと任務遂行中は上官の指示がない限り交流しないのだろう。
ケツァル少佐が、アスルが退いたソファに腰を下ろした。
「では、手短に話しましょう。そちらも何かありましたか?」
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