ケツァル少佐の部屋にいた神殿近衛兵達は、彼女達には縁遠い”現代の女性の部屋”に感動していたが、そこへ少佐と男性達がやって来た。
「休む時間がなくなりました。これから神殿へ行きます。」
と少佐が宣言した。
「”通路”がないので、車を使います。近衛兵は私の車に、デネロスと男達はロホの車に乗りなさい。」
テオは留守番だ。仕方がない、彼は大統領警護隊ではないし、”ヴェルデ・シエロ”でもない。神殿に近づくことすら許されない。
身支度は1分も掛からなかった。彼等はテオに「おやすみ」と言って、コンドミニアムを出て行った。アッと言う間だった。
いきなり静かになったリビングに、テオは一人残された。こんな時は寂しいし、己の無力さを感じた。何か能力があれば、協力出来ただろう。いや、彼等は”ヴェルデ・シエロ”でない彼がこの事件に関わるのを許さない。事件の舞台そのものが神殿だから。
一人で待つのは嫌だった。だからと言って、話し相手がいない。こんな時、話が出来る人と言えば・・・。
テオは電話は迷惑だろうと思い、メールを送った。
ーーまだ起きておられますか?
すると、即答で返事が来た。
ーー大丈夫です。
テオは思わず微笑んでしまった。ケサダ教授はムリリョ博士がテオ達の家に行くことを知らせてくれた。恐らく、その後どうなったのか、彼も気にしているのだ。博士の用事を教授は知らないだろうし、その後の展開も知らないだろう。
テオは駄目もとで尋ねた。
ーー今から会えますか?
すると、思いがけない返事が来た。
ーースィ、これからそちらへ行きます。
そして、いきなり空中からケサダ教授が現れて、テオを心底驚かせた。
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