2025/03/06

第11部  内乱        28

 「教授、貴方って人は・・・」

 テオは床に尻餅をついたまま文句を言った。

「本当にお茶目だ。」

 ケサダ教授は微笑んで、彼に手を差し出し、立ち上がるのを手伝った。服装は昼間のダンディな彼のイメージと違って、深い緑色の無地のTシャツにラフな綿パンだ。完全に部屋着姿だった。
 テオは彼をソファに座らせ、キッチンからコーラの缶を2つ持って来た。

「博士の来訪を教えてくださって有り難うございました。」

 開口一番に礼を言った。教授は肩をすくめた。

「文化保護担当部がすぐに捕まる場所は何処か、と義父に訊かれたので、貴方のアパートを教えたのです。すると彼は直ぐにガレージに走った。だから、貴方に連絡しました。」
「博士は少佐に電話をかけなかったのですか?」
「恐らくかけたのでしょうが、繋がらなかったのだと思います。彼女は何処かへ出かけていたのですか?」
「エダの神殿と言う所です。」

 テオの返事を聞いて、教授が眉を上げた。ちょっと驚いていた。

「そこは・・・新しい大神官や神官を選ぶ場所です。」
「スィ、大神官代理が病気なのです。」

 ケサダ教授には初耳だったようだ。黙ってテオを見返したので、テオは腹を決めた。教授を呼び出したのは自分だ。何も教えない訳にいかない。

「凄く厄介な事態が神殿で起きています。文化保護担当部と俺は、ある意味、それに巻き込まれてしまいました。もし、貴方が面倒なことに巻き込まれたくないとお思いなら、俺はそれ以上喋りません。」

 すると、ケサダ教授がニヤリとした。

「お茶目な人間は面倒にちょっかいを出したがるものです。」

 そして、こんな質問をした。

「先日マスケゴの神官の一人が、ケサダの家系の出なのですが、その男が博士にこんな相談を持ちかけました。先日生まれた私の息子を養子にもらえないか、と。それと今回の面倒は関係ありそうですか?」

 テオはびっくりして、そして一瞬考え、電話を出した。教授に「失礼」と断ってからケツァル少佐にメールを送った。

ーーマスケゴの神官に用心しろ。

 それから、彼は教授に向き直った。

「博士はその相談を断ったのですね?」
「勿論です。私の血筋を簡単によその家系に与えたりしません。私の血筋とケサダの家系は何の繋がりもないのですから。」

 彼はさらにこう言った。

「義父が断ると、その神官は義父に質問しました。『貴方はあの娘婿をオルガ・グランデで拾って来たが、あの男の親は何者なのか? ケサダを名乗っているが、ケサダの家系に、あの男の親に該当する人間はいない』と。」

 テオはドキリとした。神官はケサダ教授の出自を疑っているのだ。


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第11部  内乱        28

 「教授、貴方って人は・・・」  テオは床に尻餅をついたまま文句を言った。 「本当にお茶目だ。」  ケサダ教授は微笑んで、彼に手を差し出し、立ち上がるのを手伝った。服装は昼間のダンディな彼のイメージと違って、深い緑色の無地のTシャツにラフな綿パンだ。完全に部屋着姿だった。  テオ...