オルガ・グランデに到着したのは昼過ぎだった。途中の山道では野盗に出会わなかったが、民家も見かけなかった。ティティオワ山の北側をぐるりと回り込む形でハイウェイ(と言うか少し広めの山道)は付けられていて、カーブを曲がると大きな摺鉢型の都市が見えた。
「あれがオルガ・グランデです。」
とチャパがホッとした様に息を吐いてから言った。空気が澄んでいるとは言えず、砂埃が漂っている様に霞んで見えたが、それなりに大都市だ。
チャパが車を目一杯崖っ縁に寄せた。なんと対向車が次のカーブの向こうから現れたのだ。それもそこそこ大きなトラックだったので、マイロは驚いた。ちょっとでも掠ったらこちらの車は崖から落ちてしまう。トラックはクラクションを鳴らして、土埃を上げながら通過して行った。
「何処へ行くのかな?」
「アスクラカンです。他にありますか?」
マイロは車を動かした。
「地図が正確なら、カーブ3つ向こうに村があります。そこから対向車は増えてきます。でも崖は低くなるから、大丈夫でしょう。」
「君はここを運転して通ったことがあるのか?」
「ノ。」
チャパはケロリとした顔で答えた。
「でもジャングルの中を運転したことはあります。ジャングルの方が厄介なんです。道からはみ出すと泥濘にタイヤが取られて抜け出せなくなりますから。泥とヒルと虫と戦いながら車を出すのは一苦労ですよ。」
崖から落ちるより泥濘に落ちる方がマシだろう、とマイロは思ったが、言葉に出さなかった。
「エル・ティティの住人はオルガ・グランデと頻繁に行き来しているのか?」
「僕は住人じゃありませんから、知りません。エル・ティティはアスクラカンから物資を仕入れていると思います。」
「それじゃ、グラダ・シティとオルガ・グランデはどうやって物流を行っているんだ?」
「トラックです。さっきみたいな・・・オルガ・グランデは太平洋に港を持っていますから、そっちから物を買うし、鉱山の鉱石を運び出します。グラダ・シティはオルガ・グランデから物を仕入れる必要性を持ってません。だから先住民も山を挟んで部族が異なるんです。」
「現代人はどうやって・・・」
「航空機がありますって、先生!定期路線が一日1往復してます。それに週に2回ほどバスが走ってるし。」
都市が標高の高いところにあるせいか、ティティオワ山の西側の下りは東側より緩やかだった。