2022/03/30

第6部 七柱    20

  サン・レオカディオ大学の考古学教授リカルド・モンタルボは、前回ケツァル少佐とギャラガ少尉が襲撃事件の聞き取り調査で訪問したホテルにまだ宿泊していた。憲兵隊が強奪された撮影機材を故買屋で発見したので、引き取るか買い取るかで故買屋と揉めたのだ。セルバ共和国では盗品と知ってて購入しても罪にならない。なんとなく「盗られたヤツも油断していたのだから盗られても当然」と言う思想があって、官憲は盗品の行方を突き止めても、取り返してくれるとは限らない。元の持ち主に、買い戻す意思があるかと訊いて、持ち主に「取り戻したいが買い取る余裕がない」とわかれば、故買屋から押収するが、持ち主に金銭的余裕があると見てとると、「買い戻せ」と放置する。モンタルボ教授は、撮影機材がアンビシャス・カンパニーの所有なので「買い戻す意思」はなかったが、アンビシャス・カンパニーはそうではない。チャールズ・アンダーソン社長は、買い戻しより押収を希望した。それでモンタルボ教授、アンビシャス・カンパニー、故買屋、そして憲兵隊で盗品の処遇を巡って揉めていたのだ。
 テオとケツァル少佐が訪問した時、モンタルボ教授とチャールズ・アンダーソンは憲兵隊に提出する押収要請の書類を作成し終わったところだった。そこへ、テオがアブラーン・シメネス・デ・ムリリョから託されたUSBを持って現れたので、また彼等の間における雲行きが怪しくなってきた。

「映像が戻って来たのなら、カメラはもうなくても構わない。」

とモンタルボが発言して、アンダーソンを怒らせた。

「それなら発掘作業の撮影はなしだ!」

とアンダーソンが怒鳴った。

「水中作業の映像を世界に発信して、貴方の研究費用を集めると言う当初の目的が失われることになる。それでも良いんですか!」

 怒鳴り合いが始まり、USBが何故、誰によってテオドール・アルストの手に託されたのか、双方共訊くこともしなかった。ケツァル少佐がテオの肩に手を置いて囁いた。

「放っておきなさい。行きましょう。」

 テオは「アディオス」と声をかけてみたが、モンタルボもアンダーソンも振り返らなかった。
 テオと少佐は車に戻った。そして、その夜の宿を探しに行った。
 ガイドのアニタ・ロペスが教えてくれた宿は海から離れた丘の上にあった。意外にも国境警備隊の宿舎が歩いて5分程の距離に建っていた。宿はホテルと言うより民宿、B&Bだった。そこに2部屋取ってから、2人は夕食に出かけた。そちらもガイドが教えてくれた店だ。国境を越える職業運転手が多いハイウェイ沿いの店と違って、地元民しか来ない小さな店だったが、他所者を拒むこともなく、愛想の良い女将さんが「本日のお薦め」を教えてくれたので、それを注文した。
 美味しい魚介のスープと茹でたじゃがいもで満腹になる頃に、ハイウェイの方から警察車両のサイレンの音が聞こえて来た。女将さんが眉を顰めた。

「やだねぇ、また検問所破りかねぇ。」

 客の一人が窓の外をチラリと見た。

「違うようだ。ありゃ、レオン・マリノ・ホテルへ行ったぞ。」

 テオと少佐は思わず顔を見合わせた。レオン・マリノは、モンタルボ教授が泊まっているホテルだ。まさか、教授とアンダーソンが喧嘩して怪我人が出たのか? 
 テオが腰を浮かしかけると、少佐がセルバ人らしく言った。

「放っておきなさい。」
「君は気にならないのか?」
「何かが起きたことは確かです。でも私達が行って、何かを止められることはないでしょう。」

 彼女はスープの最後の一口を飲んでから、続けた。

「何が起きたのか、明日になれば街中に広がっていますよ。」

 テオは彼女を見つめ、それから店内を見た。セルバ人は野次馬が好きだが、場所が現在地から離れているので、店を出て見に行こうと言う人はいなかった。皆、椅子に座り直し、食事や飲酒を続けていた。テオは脱力した。こんな場合はセルバ人になりきれていない己を感じてしまう。モンタルボが無事であれば良いが、と彼は思った。どう言う訳か、アンダーソンのことは気にならなかった。

第6部 七柱    19

  クエバ・ネグラの町に到着したのはお昼前だった。昼食に少し早かったが、営業している食堂を見つけて早めのランチを取った。そしてクエバ・ネグラ洞窟前で自然保護担当課が手配してくれたガイドと落ち合った。ガイドはアニタ・ロペスと言うメスティーソの中年女性だった。テオがシエスタの時間に働かせることを詫びると、彼女は笑って手を振った。

「大丈夫です、私はさっき起きて朝ごはんを食べたところですから。」

 どんな生活サイクルなのかわからないが、彼女は洞窟探検用のヘッドライト付きヘルメットと長靴、蛍光マーカー付きのパーカーをテオと少佐に貸してくれた。
 洞窟内は静かで、気温が低かった。夜目が効く”ヴェルデ・シエロ”の少佐はヘッドライトを必要としないが、普通の人間のふりをして、ガイドとテオの間を歩いた。本当は先頭か殿を歩きたいだろう。
 以前トカゲを捕獲した辺りから、テオはヴィデオカメラで撮影を始めた。天然洞窟だから足元が不安定で用心しなければ転倒して大怪我に繋がりかねない。彼は時々マイクにコメントを入れ、足元、壁、天井を撮影して行った。偶に女性達も入れると、アニタ・ロペスは笑顔を作り、少佐は無表情で直ぐに顔を背けた。
 洞窟は次第に狭くなり、落盤の痕跡が見られるようになってきた。そろそろ引き返した方が良いだろう、とテオが思った頃に、少佐が足を止めた。

「水の音がします。」

 確かに、岩壁の向こうで水が波打つような音が聞こえた。
 アニタが耳を澄ましてから説明した。

「海の底から細い洞窟がこの下へ繋がっている様です。でも誰もそこまで行ったことがないし、行ける幅の通路もありません。ですから、波が来ているのだろうと言われていますが、確認した人はいません。」
「地下水脈ではないのですか?」
「地下の川ですか?」

 アニタは首を傾げた。

「古代のカラコルは水を売っていたと言われています。その水が何処から得られていたのか、不明なのですが、その水脈かも知れませんね。でも、川の存在を確認するにも音の発生源が深すぎます。」
「こんな場所でボーリング出来ないしな。」

 テオもちょっと地下水脈に興味があったが、洞窟は奥の方でかなり崩落していた。まだ新しい落石跡と思えるものもあったので、近づかない方が無難だ。彼はマイクに話しかけた。

「洞窟は最深部で崩落し、これ以上は進めない。トカゲの一つの種が独自に進化するには無理がある洞窟の長さだ。あまり長くない。」

 彼は女性達に声をかけた。

「引き返そう。地下川は地質学か考古学の世界だ。生物学の分野ではない。」

 なんだかアブラーン・シメネス・デ・ムリリョが隠したがっている秘密に繋がるような予感がした。引き返せる時に引き返すべきだ。タイミングを誤ると、また厄介なことが起きる。アニタ・ロペスを巻き込む訳にいかない。
 ケツァル少佐も彼の考えと同じことを思ったに違いない。素直に彼の提案に従った。
 3人は再び撮影しながら出口に向かって歩いた。少佐がアニタに質問した。

「カラコル遺跡の伝説は、この近辺では誰もが知っているようですね?」
「御伽噺みたいなものです。」

とアニタが笑った。

「何処かの遺跡みたいに漁網に黄金が引っかかって揚がったり、女神様の石像が揚がったりしたら、観光資源になるでしょうけど、網に入るのはサメと魚だけですから。昔、神様を怒らせて一晩で海に沈んだ町がありました。親の言うことを聞かないと、お前にも悪いことが起きますよ、って言う類の御伽噺ですよ。」

 洞窟から出ると、まだ太陽は高く、陽光が眩しかった。テオと少佐は装備を体から外してガイドに返却し、料金を支払った。テオがチップを渡すと、アニタは夕食に最適なお店と快適な宿を紹介してくれた。緑の鳥のロゴが入った車を見て、私服姿の少佐と白人のテオを見比べながら、アニタが「本当に大統領警護隊ですか?」と尋ねた。テオは「スィ」と答えた。彼は少佐を指し示し、

「彼女が大統領警護隊で、俺は顧問。」

と紹介した。アニタが少佐を見て微笑んだ。

「国境警備隊のグリン大尉も優しい方です。やっぱり女性の軍人さんの方が接しやすいですね。男の方は威張っているから・・・」

 彼女は急いで周囲を見回した。

「さっきの話は内緒ですよ。」

と言ったので、少佐が笑った。
 ガイドと別れて、テオは少佐と共にモンタルボ教授が宿泊しているホテルを目指した。


 

第6部 七柱    18

  雨季休暇が始まった。大学での来季に向けた事務手続き等を終えたテオドール・アルストは、エル・ティティに帰省する前に、アブラーン・シメネス・デ・ムリリョから依頼された仕事を片付けることにした。今度のクエバ・ネグラ行きは、ケツァル少佐と2人きりだった。文化保護担当部の業務を部下達に任せ、彼女はモンタルボ教授の発掘準備がどの程度進行しているのか確認するつもりだった。
 車は大統領警護隊のロゴマークが入ったオフロード車だった。テオは運転を頼まれ、ハイウェイを快調に走って行った。少佐と長時間ドライブに2人きりで出るのは初めてではないだろうか。彼はちょっとワクワクした。「ちょっと」と言うのは、彼女と出かけると大概何か厄介な問題が待ち受けていたりするからだ。不安ではないが、浮かれていられない、そんな気分だった。
 グラダ・シティを出て10分ほど経ってから、彼女が言った。

「2日前、カタリナ・ステファンがフィデル・ケサダの自宅を訪問しました。」

 ケサダ教授がカタリナ・ステファンを自宅に招待したがっていると、試験期間前に聞いていたので、テオは驚かなかった。大学の職員として教授も試験期間中忙しかったので、カタリナの訪問が実現したのはやっと2日前だったのだ。

「カタリナを招待した人は、マレシュ・ケツァルだね?」
「スィ。」

 テオは大学病院の前庭で出会った車椅子の老女を思い出した。付き添っていたフィデル・ケサダの妻コディア・シメネス・デ・ムリリョが、「半分夢の世界に生きている」と言っていた人だ。
 対面はケサダ家の居間で行われた。教授はその日子供達4人を母家のムリリョ家へ遊びに行かせて、夫婦とマレシュ・ケツァルだけでカタリナと彼女を車で送ったケツァル少佐を迎えた。カタリナは玄関口でケサダ教授を見るなり、「大きくなったわね、フィデル!」と叫んで、教授を照れ笑いさせた。
 カタリナは直ぐにマレシュを見分けた。生まれた時から近くにいた人だ。父親と共に鉱山で働いていた労働者仲間だった。男性の姿をしていたが、カタリナはマレシュが女性だと知っていた。可愛がってくれた人を忘れる筈がない。彼女は皺だらけになったマレシュの手を握り、涙した。マレシュもカタリナを覚えていた。彼女と彼女の母親を時々混同したが、”心話”と言葉で思い出話を楽しんだ。ケツァル少佐は彼女達が使うイェンテ・グラダ村方言が理解出来ず、黙ってそばで聞いていた。ケサダ教授も子供時代に母親と別れたので、方言をかなり忘れており、義母の世話をしているコディアの方がマレシュとカタリナの会話をよく理解出来た。やがて、カタリナはケツァル少佐を車椅子のそばに呼び、マレシュに紹介した。

ーーウナガンとシュカワラスキの娘です。貴女の従弟妹の子供です。

 車椅子に座ったままマレシュはケツァル少佐の上半身を抱きしめて、「血族を宜しく」と囁いた。
 対面は1時間程で終わり、カタリナはマレシュに再会を約束して別れた。

「カタリナはマレシュとの会話の内容を詳しくは語ってくれませんでした。恐らく、私達が生まれる前の思い出話で弾んだのでしょう。ただ、帰りの車の中で私にこう言いました。『フィデルはヘロニモ・クチャに生写しです』と。」

 テオは思わず顔を少佐に向けた。そして、慌てて前に向き直った。

「ムリリョ博士は、フィデル・ケサダの父親が誰かわかっていたんだな。」
「そうですね。でも博士はフィデルに教えていない。母親のマレシュが言わないのだから、彼が言う権利はないとお考えなのでしょう。」
「マレシュにとっては、ヘロニモとエウリオは同じ重さの同胞だった。だから、どっちが息子の父親なのかってことは関係ないのだろう。 ヘロニモもエウリオもナワルは黒いジャガーだったんだろうな、きっと。」
「どちらも、息子が白いジャガーとは想像すらしなかったでしょう。」

 テオはまた「え?」と少佐を見た。

「フィデルはジャガーなのか?」
「誰も彼がピューマだとは言っていませんよ。」
「しかし・・・」
「彼が貴方にピューマの存在を教えたので、貴方が勝手に彼はピューマだと思い込んでいたのです。カルロも同じですね。でもフィデル・ケサダはジャガーです。エル・ジャガー・ブランコですよ。」
「それじゃ、ケサダ教授は”砂の民”ではないのか・・・」
「違いますね。」

 テオはホッとした。職場の同僚で尊敬する人が闇の暗殺者ではないかと疑っていた己を、ちょっと恥ずかしく思った。ケサダ教授は義父が”砂の民”の首領なので、自身が気づかぬうちに闇の集団の知識を得ていたのだろう。それならば・・・

「リオッタ教授を暗殺したのは、ケサダ教授ではなかったんだ・・・」
「そうですね。」
「エミリオ・デルガドがジャングルの中で目撃した白いジャガーも教授だったんだな?」

 今度はケツァル少佐が驚いて振り返った。

「グワマナのデルガドが白いジャガーを目撃したのですか?!」

 しまった、とテオは心の中で舌打ちした。「見てはいけないもの」を見てしまったデルガド少尉と同僚のファビオ・キロス中尉だけの秘密だったのだ。

「俺、何か言ったかな?」

 狼狽していることを少佐が気がつかぬ筈がない。彼女は彼の横顔を見つめ、それから視線を前方に向けた。

「何時、何処で? それは聞きましたか?」
「詳細は聞いていない。ただ、ジャガーは彼等をディンゴ・パジェが隠れている場所へ案内した。それだけだ。デルガドはジャガーだと断言した。キロスから絶対に口外するなと言われたそうだが、手柄を立てさせてくれたジャガーの存在を黙っているのが辛くなったそうだ。それで、伝説などでこんな場合昔の人はどうしていたのか聞こうと考えて、大学へやって来た。ムリリョ博士かケサダ教授に面会を希望したんだが、当日2人の考古学者は大学を留守にしていたので、エミリオは俺のところに来たんだ。だから俺がキロスの忠告に従って黙っていろと言ったら、やっと納得した。」

 ふっと少佐が安堵の笑みを漏らした。 

「ムリリョ博士の耳に入っていたら、大変なことになっていましたね。貴方が相談に乗ってあげて良かったです。それにしても、フィデルもクールに見えて結構ヤンチャな人ですね。」
「スィ、君と俺がオルガ・グランデで彼と話をしたほんの2日後だったんじゃないかな? どうやってディンゴ・パジェを見つけたのか知らないが、彼は時々凄い能力を披露してくれるよ。」
「世が世であるならば大神官となっていたであろう能力者ですから。」
「でも白いジャガーは大神官になれない・・・」
「なれません。能力を黒いジャガーに捧げて生贄となる運命だったのです。」
「だが、現代は生贄をやらないんだろ?」
「しません。でも・・・」

 少佐が忌まわしいものを思い出して言った。

「純血至上主義者の極右は、白いジャガーの存在を知れば古代の儀式を復活させようとするでしょう。」
「矛盾している。白いジャガーは純血種だ。だが、黒いジャガーは、ミックスのカルロ・ステファンとアンドレ・ギャラガしかいないぞ。」
「ですから、ややこしいことになりかねないのです。純血の黒いジャガーをグラダの血を引く人々に生ませようとするでしょう。」

 テオはそれでやっとムリリョ博士が何故ケサダ家の人々を身近に住まわせて守っているのか理解出来た。純血至上主義者の博士は、極右の純血至上主義者の考えがわかる。故に、グラダの血を引く孫娘と、純血グラダの白いジャガーである娘婿を博士は必死で守っているのだ。

「すると、カルロとアンドレをケサダ家の娘達に近づけない方が安全なんだな?」
「グラシエラも半グラダです。でも、恋愛は当人達の問題で、周囲の都合でコントロール出来るものでもないでしょう。大事なのは、極右の人々に生贄の儀式復活を考えさせないようにすることです。だから、フィデルのナワルの話は決して口外してはならないのです。」

 ある意味、ファビオ・キロス中尉の禁忌に対する警戒心が正解なのだ。見たものを忘れろ。
 テオは言った。

「今の会話を、俺達も忘れよう、少佐。」

 ケツァル少佐も頷いた。

「スィ。承知しました、ドクトル。」


2022/03/29

第6部 七柱    17

  午後、シエスタが終わり、大統領警護隊文化保護担当部は業務に励んでいた。マハルダ・デネロス少尉も大学から戻り、机の前に座るとパソコン相手に担当する仕事に精を出した。フィデル・ケサダ教授が現れたのは、午後4時半頃だった。申請書に署名をしていたケツァル少佐は頭の中で名を呼ぶ声を聞き、顔を上げた。階段を上った所で教授が立っており、彼女と目を合わせると無言で顎を振り、「来い」と合図した。彼女は立ち上がり、ロホに”心話”で席を外すことを伝えた。彼女がケサダ教授の呼び出しを受けたと知って、ロホは不安になった。教授の娘と話をしたことが父親の怒りを買ったのか、それともムリリョ家の屋敷を覗いていたことがマスケゴ族の長老に知られてしまったのか。少佐は部下の心配をよそに、さっさとカウンターの外に出て、階段を降りて行った。
 雑居ビルの外に出たケツァル少佐は迷うことなくカフェ・デ・オラスに入った。教授は既に席を確保してコーヒーを注文した所だったので、彼女もその正面に座り、コーヒーを頼んだ。

「御用件は?」

 挨拶抜きでいきなり質問した。相手は目上で恩師でもある人だったが、業務中の呼び出しだったので、彼女は時間を節約しようと心がけた。ケサダ教授も単刀直入に質問した。

「今日の昼に、マルティネスとギャラガ、アルストがムリリョ家を見ていたが、何か意図があったのですか?」

 少佐は一瞬考え、そして答えた。

「今日の午前に私はアルストを同伴してロカ・エテルナ社を訪問しました。用件はアブラーン・ムリリョにお聞きになると宜しいですが、モンタルボ教授が襲撃された件です。その時、アルストがロカ・エテルナ社の社屋の形状に興味を持ちました。要件を済ませて文化保護担当部に戻ってから、昼食時に彼がそのことを言うと、マルティネスがマスケゴ族の住宅の形状、特にムリリョ家の屋敷が特徴的だと述べて、昼休みの暇つぶしに男達だけで出かけたのです。
 帰還してから、彼等は楽しいドライブだったと報告しました。その時、お宅のお嬢さんと出会ったそうです。父である貴方のお許しなくアルストが言葉を交わした無礼を、私が彼に代わってお詫びします。」

 教授は腕組みして彼女の返答を聞いていた。頭の中で内容を吟味した様だ。コーヒーが運ばれてきて、2人の前に置かれた。彼は一口コーヒーを飲んでから、口を開いた。

「わかりました。屋敷を見ていたのは、ただ建築に関する興味からだと解釈して宜しいのですね。」
「スィ。立派で美しい、そして風変わりな形状の邸宅を見学に行っただけです。建設会社の経営者らしい、ユニークな形だとアルストが感心していました。」
「オルガ・グランデにあったマスケゴ族の住居はもっと貧しいものでした。博士が生まれ育った生家も廃墟になって残っています。本当に部族の住居を見たければ、あちらへ行かれることです。」

 彼は少佐の目を見た。

ーーアブラーン・シメネスはピューマではないが、怒らせると危険な男です。

 ”心話”で警告を受けた少佐は素直に頷いた。そして面会の要件はこれで終了したかな、と思った。すると、教授はもう一口コーヒーを飲んでから、彼女がロカ・エテルナ社を訪問した件に関して質問してきた。

「モンタルボが襲撃された事件にロカ・エテルナが関わっていたのですか?」

 少佐はアブラーン・シメネス・デ・ムリリョが考古学者の身内に部族の秘密を教えていないことを確信した。言うべきではないかも知れないが、アブラーンが隠したかった秘密などモンタルボの映像には映っていなかったのだ。

「会社ではなく、ムリリョ家の先祖代々の秘密だそうです。」

 微かにケサダ教授の顔に、しまった、と言う色が浮かんだ。訊くべきでなかったと言う後悔だ。だから少佐は彼を安心させるために素早く言った。

「アブラーンは、海に沈んだ古代の町に秘密の建築技法が施されていたと伝え聞いていたそうです。もしその仕組みがわかる様な遺跡であれば、発掘される前に処分したいと思ったらしいのです。しかし、モンタルボから奪った映像に映っていたのは、ただの珊瑚礁と魚、泥を被った石造物の欠片だけでした。珊瑚礁を傷つけたり出来ませんから、文化財遺跡担当課は海底を掘る許可を出していません。ですから、アブラーンはこの件を終了すると断言しました。我々にモンタルボのUSBを返すようにと彼は依頼しました。」

 彼女は試しにケサダ教授に尋ねた。

「貴方もご覧になりますか、海底の映像を?」

 ケサダ教授は「ノ」と首を振った。そして少佐にコーヒーを飲むように手で促した。彼女がコーヒーを口に含んだ時、彼は不意に言った。

「今日あの3人の男達が出会った私の娘は長女のアンヘレスですが、彼女が帰宅して私に『グラダを見つけた』と言いました。」

 ケツァル少佐はもう少しでむせるところだった。 グラダはグラダを見分ける。 それは少佐自身が数年前に入隊間もないカルロ・ステファンを見て、「グラダがいる」と指摘したことを、後に上層部がグラダ族の能力を高く評価して言った言葉だと伝わっていた。彼女がアンドレ・ギャラガを引き抜いた時も、思い出したようにこの言葉が大統領警護隊本部の中で囁かれたのだ。公式には、現在生きているグラダ族は、ケツァル少佐、カルロ・ステファン、そしてアンドレ・ギャラガの3人だけと言うことになっている。
 アンヘレス・シメネス・ケサダは、公式には純血のマスケゴ族と言うことになっている。しかし、父親は、マスケゴ族のふりをして生きている純血のグラダだ。
 少佐はここで誤魔化しても仕方がないと判断した。だからギャラガ少尉からの報告を素直に明かした。

「ギャラガがお嬢さんの気の放出を感じ取りました。マルティネスには感じ取れなかったそうです。」

 ケサダ教授は無言で彼女を見つめ、やがて目元をふっと微かに緩ませた。

「グラダはグラダを見分ける、か・・・。貴女も私が何者なのか知っている訳ですね。」

 少佐は肩の力を抜いた。少なくとも相手を怒らせずに済んだ、と感じた。

「正直に告白しますと、本当に最近迄気がつきませんでした。貴方がビト・バスコ殺害事件でセニョール・シショカの仕事に干渉なさる迄は。あのシショカを戦わずして制圧出来る貴方の強さがどこから来るのだろうと考え、この国で一番強い者の存在に考えが至りました。」
「私は決して強くありません。」

 ケサダ教授は決して彼女に”心話”を要求しなかった。知られたくない心の深淵を覗かれるのを防ぐためだ。

「貴女は長老会のメンバーとイェンテ・グラダ村の廃墟へ行かれた。恐らくそこでオルガ・グランデに出稼ぎに行った3人の村の生き残りの話を聞かれたのでしょう。そして生き残り達が残した子孫の存在を知った。カルロ・ステファンとグラシエラ・ステファン以外の人間の存在です。」

 彼は冷めてしまったコーヒーを飲んだ。

「私は今でも義父の保護下にいます。妻も私の保護者です。そしてアブラーンも私を守ってくれています。私は家族に守られて生きているのです。決して貴女が思っている程強くない。」
「でもお嬢さん達は貴方の力を受け継いでいらっしゃいます。どちらの世界で生きるかを決めるのは、お嬢さん達自身でしょう。」

 少佐は教授が溜め息をつくのを眺めた。そして彼を安心させるために言った。

「貴方のお生まれのことを知っているのは、私以外では、アルスト、マルティネス、そしてギャラガだけです。カルロ・ステファンは知りません。故意に教えていません。あの子は貴方に心を盗まれる迂闊者ですから。」

 プっと教授が吹き出したので、彼女はホッとした。重い空気が払拭された感じだ。教授が彼女に囁いた。

「一つお願いがあります。カタリナ・ステファンに会いたがっている人がいるのですが。」


2022/03/28

第6部 七柱    16

 「何故ケサダ教授がグラダ族だと思うんだ?」

と車に乗り込んですぐにロホが後部席のギャラガに尋ねた。ギャラガ少尉は肩をすくめた。

「スクーリングで数回お会いしただけですが、教授は時々私に”心話”で力の使い方を教えて下さいました。私が他の学生の行為や発言でちょっと動揺したりした時です。私のほんの少しの心の乱れを察知されたのです。官舎で多くの先輩達に助言を頂いたりしますが、教授が指摘された様な細やかな点まで触れられたことはありませんでした。何と言うか、教授は・・・」

 テオがカーブでハンドルを切りながらギャラガの言葉を継いだ。

「ケツァル少佐みたいだ、と言いたいのかい?」
「スィ!」

 ギャラガが嬉しそうに肯定した。

「ステファン大尉は、戦いの時の力の使い方を上手に教えて下さいますが、抑制方法は苦手のようで・・・」
「あいつ自身が学んでいる最中だから、仕方がないさ。」

 ロホが苦笑した。

「教授はひたすら抑制することを学んで来られた方だから、そちら方面がお上手なのだろう。これからお嬢さん方も教育していかなければいけないしな。」
「でも、何故グラダだと公表なさらないのです?」
「大人の事情だよ、アンドレ。」

 テオはグラダ族仲間を見つけて喜んでいる若者にそっと釘を刺した。

「彼には彼の家族の事情があるんだ。それに教授はマスケゴ族として生きたいと希望されている。お子さん達がどう思うかは、お子さん達の問題で、俺たちがとやかく言うことじゃない。」

 ギャラガは黙って外の風景を眺めていたが、やがて頷いた。

「わかりました。私はこれからも教授のアドバイスを素直に受け容れる、それで良いですね。私も母親が言ったブーカや、もしかしたらカイナ族かも知れませんが、皆さんが私はグラダで、グラダとして生きろと仰る。だからその通りに生きようと思っています。グラダ族として学ぶ方が私の気持ち的にも楽なので。」

 何だかわかった様なわからない様な意見だったが、テオとロホは微笑して頷いた。そして2人とも思った。 ケサダ教授と家族の血統は実に明確だ。しかし、このアンドレ・ギャラガは本当に何者なのだ?


第6部 七柱    15

  グラダ・シティ市民となったマスケゴ族は故郷のオルガ・グランデを懐かしんでいるのか、それとも住居とはこう言う場所に築くものだと考えているのか、少し乾燥した感じの斜面になった土地に集まっていた。意図して集まっているのか、自然に集まったのかわからない。しかし、助手席のロホが「あれもマスケゴ系の家です」と指差す家屋はどれも斜面に建てられていた。テオはなんとなく違和感と言うか、或いは既視感と言うか、不思議な感覚を覚えた。オルガ・グランデで見たのは、斜面に建てられた石の街だった。殆どが空き家になっていたので、遺跡の様に見えた。住民は新しい家屋を手に入れて平地へ引っ越したのだと聞いた。そこに住んでいた人々はマスケゴ族とは限らず、”ティエラ”の先住民やメスティーソ達、鉱山労働者が多かった。

「大きな家を見ると、どう変わっているか、わかりますよ。」

 ロホは車を進めた。オルガ・グランデと違って、グラダ・シティの斜面の街は高級住宅街だ。高級コンドミニアムが多い西サン・ペドロ通りと違って、こちらは一戸建てばかりだ。緩やかな斜面に木々を植え、緑の中に家々がぽつんぽつんと顔を出していた。斜面だから日当たり良好だろう。

「え? あれも住宅?」

 思わずテオが声を上げたので、後部席でうたた寝していたギャラガ少尉が目を開けた。そして窓の外の風景を見て、彼は座り直した。

「階段住宅だ・・・」

 樹木の中に突然白い壁の大きな階段状の建造物が現れた。全部で七段はあるだろうか。それぞれの屋根が上の階の住宅の庭になっている。わざわざ斜面に階段状の家を建てたのではなく、岩盤を掘り抜いて家に改造してしまっている、と思えた。最下段の家がどの程度奥行きがあるのか樹木が邪魔で見えないが、かなり床面積が広そうだ。

「あれがムリリョ家です。」

 ロホはその家が一番よく見える道路のカーブで駐車した。狭い谷を挟んで向かいに屋敷が見えた。テオ達がいる場所はもう少し家が立て込んでいて、庶民的な感じがするが、一軒ずつは大きいので、こちらも高級住宅地なのだろう。車外に出ると、少し標高があるせいで空気が乾いて感じられた。ロホが最下段を指差した。

「一番下が母家です。あそこから始まって、子孫が増える毎に上に上がって行くのです。」
「それじゃ、最上段の主が一番若いのか?」
「理屈ではそう言うことになります。実際に誰がどこに住むかは、家族内で決めるのでしょうけど。」

 ギャラガが最下段を指差した。

「ムリリョ博士はあそこですか?」
「多分ね。もしかすると長男のアブラーンの家族かも知れない。或いは、博士夫婦と長男夫婦がいるのかも知れない。」

 テオはテラスガーデンを眺めた。花壇や池が造られている庭があれば、芝生でゴルフの練習場やサッカーゴールが置かれている庭もある。ボールが落ちるだろうと心配してやった。鶏小屋が置かれている庭もあって、鶏が外に出されて歩き回っていた。

「ケサダ教授はあの家に住んでいるのかい?」

と尋ねると、ロホはちょっと目を泳がせた様子だった。だが、すぐに巨大なテラス状の屋敷の向こうに見えている小振の2段になった、やはり白い壁の家を指差した。

「あの向こうに見えている家です。教授は博士の実のお子さんではないから、と言う理由ではなく、奥様のコディアさんの希望で別棟を建ててもらったと聞いたことがあります。」

 テオはロホが何か言いたそうな目をしたことに気がついた。悲しいかな、彼は”心話”が出来ない。しかし、何となく親友が何を言いたいのか理解出来るような気がした。
 フィデル・ケサダ教授の妻コディア・シメネス・デ・ムリリョは夫が純血のグラダであることを知っている筈だ。しかもただのグラダ族ではない。”聖なる生贄”となる筈だった純白のピューマだ。(テオはまだケサダがピューマだと信じている。)夫の正体を、彼女は彼女の兄弟姉妹に知られたくないのだ、きっと。そして半分その血を引いている娘達をしっかりマスケゴ族として教育してしまう迄、兄弟姉妹の家族から離しておきたいのだろう。
 その時、ギャラガがビクッと体を震わせた。ロホが気づき、テオもワンテンポ遅れて彼を見た。

「どうした、アンドレ?」

 ロホが声をかけた時、斜面の上の方から自転車で道を下って来た少女がいた。先住民の純血種の少女だ。彼女はテオ達が車の外で並んで谷の向かいにある家を眺めていることに気がついて、自転車の速度を落とした。13、4歳の美少女だ。
 「オーラ!」と元気よく声をかけられて、男達はちょっとドキドキしながら「オーラ」と返した。少女は自転車に跨ったまま話しかけてきた。

「面白い家でしょ?」
「スィ。」
「隠れん坊するのに丁度良い広さなのよ。」

 未婚女性に紹介なく話しかけてはいけないと言う習慣を思い出して、ロホとギャラガが戸惑っているので、テオは「無神経な白人」を演じて、彼女の相手をした。

「君はあの家で遊んだことがあるの?」
「スィ、殆ど毎日よ。」

 ロホとギャラガが顔を見合わせた。「マジ、拙い、ムリリョ家の娘だ」、と”心話”で交わした。テオは気にせずに続けた。

「君はあの家の子供なんだね?」
「ノ。」

 彼女はあっさり否定すると、巨大なテラス邸宅の向こうの小さい家を指差した。

「私の家はあっち。手前の家はお祖父ちゃんと伯父さんの家よ。上の階に行くと従兄弟達の家族が住んでいるわ。他にも叔父さんや伯母さん達がいるけど、あの人達は他に家を持っているの。私のパパだけがお祖父ちゃんのそばに住むことを許されているのよ。」

 彼女はちょっと自慢気に言った。そしてテオに言った。

「うちに来る? ママはお客さん大好きなの。パパの学校の学生がよく遊びに来るわ。」

 テオは微笑んだ。

「オジサン達も君のパパの友達と学生なんだ。だけど今日はもうすぐお昼休みが終わるから帰る。誘ってくれて有り難う。気をつけてお帰り。」
「グラシャス。 じゃ、また来てね!」

 彼女は再び自転車に乗り直し、勢いよく坂道を下って行った。
 警戒心が全くないのは、子供だからか? きっとグラダ族の能力の強さから来る自信だろう。とテオは想像した。すると、ギャラガがまた身震いした。

「さっきの女の子、凄い気を放っていましたね。」

 ロホが彼を見た。その表情を見て、テオは最強のブーカ族の戦士である彼が、少女の気の放出に気が付かなかったのだと悟った。彼は思わず呟いた。

「グラダはグラダを見分ける・・・」

 ロホとギャラガが彼を見た。をい! とロホが咎める目付きになり、ギャラガは目を見張った。 彼は一瞬にして、重大な秘密を悟ってしまった。

「フィデル・ケサダはグラダなのですか?」


2022/03/27

第6部 七柱    14

  テオは自然保護地区に立ち入る許可証をもらいに文化・教育省の3階へ行った。自然保護課にクエバ・ネグラ洞窟に立ち入って撮影する許可証を申請すると、もう顔を覚えられていて、「トカゲの洞窟ですね」と許可証を発行してくれた。それもその年の雨季の間は何時でも入ることが出来るフリーパス許可証だ。入洞する日を伝えれば、自然保護課からガイドに連絡してくれると言う。
 テオはふと思い出して尋ねてみた。

「アイヴァン・ロイドと言う男性がジャングルか海に潜る許可申請に来ていませんか?」

 職員が首を傾げた。

「アイヴァン・ロイド? 外国人ですか?」
「スィ、アメリカ人だと思いますが・・・」
「今季にそんな名前の申請はありませんね。」

 職員はパラパラと名簿をめくった。パソコンで検索しようとしない。

「申請せずに勝手にジャングルに入る人もいますからね。森林レインジャーや地元の自警団に撃たれても、こっちは責任取れないって言ってるんですが、守らない人は多いです。」

 セルバ共和国は小さな国だから、ジャングルの中で他所者に襲い掛かる先住民はいないことになっている。内務省の先住民保護政策によって、全ての集落の位置と人口が把握され、登録されている筈だ。だから自然保護課は、不法侵入者として自警団が他所者に危害を加えることを心配しているが、他所者が怪我をしたり命を落としても責任を持たない。森林レインジャーも麻薬組織の隠し畑やアジトを警戒しているので、他所者が指示に従わないと躊躇なく銃撃する。それに数は少ないが反政府ゲリラも出没する。外国人だとわかれば殺害されたり誘拐される。
 テオはアイヴァン・ロイドが大人しくセルバ共和国から撤退してくれることを願った。外国人が死んだりして、また北米のややこしい組織が動くと面倒だ。
 許可証明書をもらって文化・教育省を出た。カフェ・デ・オラスでコーヒーを飲んで時間を潰し、やっと昼休みになったので、文化保護担当部の友人達と昼食に出かけた。
 行きつけの店の1軒に入り、好きなものを注文して食べていると、ロホが話しかけて来た。

「ムリリョ家の建物を見たことがありますか?」
「巻貝みたいなモダンなビルかい?」
「それはロカ・エテルナの社屋でしょう。ムリリョ博士と子供達の自宅ですよ。」
「変わっているのかい?」
「ブーカ族の基準で見ると面白い形状です。マスケゴ族ってオルガ・グランデに住んでいたので、ああ言う形状の家を好むんでしょうかね。」

と言われてもテオは見たことがないのでわからない。わからないと言うと、食事の後で見に行きましょう、と誘われた。暇だから、テオは誘いに乗った。ケツァル少佐はロカ・エテルナ社訪問の間に溜まった書類を片付けると言って、このドライブを辞退し、ギャラガは後部席で昼寝させてくれるならついて行くと言った。それで、食事を終えると男達は少佐と別れ、テオの車に乗り込んだ。ロホのビートルは後部席で昼寝するには少し狭かったのだ。


第11部  神殿        23

  一般のセルバ共和国国民は神殿の中で起きた事件について、何も知らない。そんな事件があったことすら知らない。彼等の多くは”ヴェルデ・シエロ”はまだどこかに生きていると思っているが、自分達のすぐ近くで世俗的な欲望で争っているなんて、想像すらしないのだった。  テオは、大神官代理ロア...