グラダ・シティとプンタ・マナの中間辺りにある寂れた農漁村の小さなキリスト教会に2人の男が駆け込んで来た。夕刻の礼拝の準備をしていた司祭に彼等は縋り付くようにして訴えた。
「神父様、匿って下さい、俺達はまだ死にたくない。」
若い神父はちょっと驚いて開放されたままの扉の向こうを見た。まだ西日が射す時刻でもなく、外は日曜の午後をのんびり過ごす村人達がサッカーに興じたり、ベンチでお喋りしている姿が見えるだけだった。
「誰かに追われているのですか?」
男達は顔を見合わせた。一人が告解室を指差した。
「懺悔させて下さい。」
神父はもう一人の方を見た。2人目の男は椅子にぐったりと座り込んでしまった。
「駄目だ、どこに行っても追いかけてくる・・・あいつらから逃げることは不可能だ!」
「あいつらとは?」
神父の問いかけに男達は再び顔を見合わせた。懺悔を希望する男が尋ねた。
「神父様、あんたはセルバ生まれかい?」
「ノ、私はフランスから来ました・・・」
「それじゃ、わからないだろう。」
男はちょっと苛つきながら告解室を指差した。
「さぁ、懺悔を聞いてくれ。俺達を追いかけて来る古代の神の話を聞いてくれ。」
その時、入り口から差し込んでいた陽が翳った。神父と2人の男が振り返ると、入り口に黒いシルエットになって一人の女性が立っていた。
神父が記憶しているのは、そこ迄だった。彼が我に帰ると、教会内には誰もいなかった。2人の男も、入り口に立った陰を作った女性も姿を消していた。
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