「今夜来ていただいたのは、もし資金調達の目処が付いたら、申請からどれぐらいの時間で発掘許可を出していただけるか、お聞きしたかったのです。」
モンタルボ教授はなんとか食べた物を逃さずに済んだ。テーブルに向き直り、非礼を詫びてから、そう言った。
「申請時期がいつかで、待機時間が変わります。」
とギャラガが申請受付係として言った。
「先ず、ハリケーンのシーズン前であれば、シーズンが終わるまで許可は出せません。危険だとわかっていて海に出る許可を出せませんから。それに地上遺跡と違って水中遺跡は発掘隊の準備状況の報告も必要です。許可を出したのに、これから装備を整えます、と言うのであれば、発掘シーズンが終わってしまいますから。」
彼は御託を並べてから、締めくくった。
「取り敢えず雨季が始まる頃に予算を組んで申請を出して下さい。そしてハード面での準備を雨季の間に整えられることです。お話を伺うと助成金給付を希望されている様ですから、文化財遺跡担当課が再度の準備調査と給付検討を行う筈です。」
彼は上官達を見た。テオは彼が”心話”で許可の合否が出る期間を質問したな、と見当をつけた。ギャラガはモンタルボ教授に視線を戻した。
「許可の合否が出るのは早くて2ヶ月後です。雨季が終わる前になりますから、そちらの準備期間は十分だと思います。」
「やはり文化財遺跡担当課が先ですか?」
「スィ。あちらが審査して通った書類を我々が再吟味するのです。」
「海でも護衛をつけていただけるのですか? 海賊とかサメとかから守っていただけますか?」
「海上の護衛は陸軍水上部隊か沿岸警備隊が行います。大統領警護隊は担当外です。」
ロホが付け足した。
「港であなた方が水中から引き揚げる出土品をチェックします。それが我々の仕事です。」
テオはあまり馴染みのない考古学教授に尋ねた。
「俺は今朝クエバ・ネグラから帰って来たばかりですが、現地の人に聞いたところでは、あの海域はサメが多いそうです。貴方が潜られた時はどうでしたか? サメはいましたか?」
「小さいのを2、3匹見ましたが、害はないと思いました。しかし、先ほどの写真・・・」
「馬鹿でかいサメが釣れて、その腹から出てきた犠牲者です。地元でも大騒ぎでした。」
テオは大統領警護隊の友人達を見た。
「あっちじゃ、サメを守護者と呼ぶそうだよ。」
「普通は言いませんよ。」
とロホが不愉快そうに言った。
「もし本当にそう呼ばれているのなら、そこに何か地元民にとって大事な物があるから、と言う意味でしょう。」
確かにそうだ。セルバで”守護者”と呼ばれるのは古代の神様ヴェルデ・シエロか、その僕と考えられている大統領警護隊のことだ。