彼等は数百メートル神殿に向かって進んだ。そして、デネロス少尉が前方に複数の人間の気配を察知した時、キロス中尉が言った。
「我々神殿近衛兵のキャンプです。」
キャンプ? 言葉に疑問を感じて少尉はケツァル少佐を見た。少佐も不愉快そうな表情をした。
「貴方方は神殿に入らないのですか?」
中尉が小声で答えた。
「入れないのです。」
彼女が手で前進を促し、3人は開けた場所に出た。木の枝でカムフラージュされたテントが3基設営されており、4人の女性兵士がいた。4人共キロス中尉同様短槍を持っており、テントから出て来た5人目だけがアサルトライフルを持っていた。キロス中尉が訪問者を紹介した。
「大統領警護隊文化保護担当部のミゲール少佐とデネロス少尉だ。」
そして訪問者に仲間を紹介した。
「私の部下達です。」
つまり全員少尉だ。デネロスは奇異な印象を抱いた。
「全員女性ですね?」
「スィ。今回ここに来る任務を賜ったのは女だけです。」
銃を持った兵士がキロス中尉のそばに来たので、キロス中尉が紹介した。
「私の副官のトーコ少尉です。残りは、アクサ、もう一人もアクサ、ナカイ、セデス、全員少尉です。アクサはマリアとカタリナ、名前で呼び分けています。」
全員がブーカ族だ、とデネロスは思った。それも純血種だ。姓が同じなのは仕方がない。一族の人口自体が少ないのだし、家族の単位数も少ない。多分、全員がどこかの時代で親戚なのだ。
ケツァル少佐が質問した。
「神殿に入れないとは、どう言う理由からですか?」
「わかりません。」
中尉が腹立たしげに神殿の建物を見た。
「神官達が結界を張っているのです。」
少佐がグラダ族の目で空中を眺めた。
「3、4人の共同作業の様ですね。一人の神官で神殿全体を覆うのは無理です。グラダでない限り。」
彼女は微かに微笑んだ。
「私には破れますよ。結界を張っているのはブーカではない、サスコシとカイナです。どうやら、神殿の中で神官同士対立している様です。」